今期5作も!「刑事ドラマ」はなぜ飽きられないのか 第1号から「相棒」「教場」まで歴史を紐解いて解説

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刑事ドラマの古典的名作『七人の刑事』(TBSテレビ系、1961年放送開始)などにも、ドキュメンタリー的側面は受け継がれた。『ダイヤル110番』のように実際の事件を下敷きにしていたわけではなかったが、被爆者差別の問題を絡めたエピソードなど社会性の強い回も多く、それがまた学生など若者を中心に多くの反響を呼んでいた。

このような社会問題への鋭い意識は決して過去だけのものではなく、『相棒』(テレビ朝日系、2000年放送開始)などにも感じられる。

例えば、ファンのあいだでも有名なseason9の「ボーダーライン」と題された回では、派遣社員として必死に働くものの、結局報われることなく紆余曲折の末に命を落としてしまうひとりの男性の姿が、杉下右京の推理を通して克明に描かれる。

その背景にあるのは長い経済的停滞が続く日本社会の状況であり、他人事ではないリアリティがあった。

『踊る大捜査線』が変えた警察の描きかた

刑事ドラマの底流にあるこうしたリアル志向は、警察という組織をリアルに描くというかたちでも実を結んだ。そんな「警察ドラマ」の路線を確立させたと言えるのが、1997年に始まった『踊る大捜査線』(フジテレビ系)である。

それまでの刑事ドラマは、基本的に「刑事対犯人」という構図で話が進んでいた。だがこの作品では、そこに「現場の刑事対警察組織」という構図が加わった。「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というあまりにも有名な主人公・青島俊作のセリフは、そのことを象徴している。

『踊る大捜査線』で言えば、織田裕二演じる青島俊作は所轄の刑事なのに対し、柳葉敏郎演じる室井慎次は警視庁の管理官(初登場時)。この2人の対立、そして友情を軸に物語は進む。警察における管理職のひとつである「管理官」だが、役職名自体そこで初めて聞いたという視聴者も多かったのではなかろうか。

このように警察をリアルに描くということは、刑事を常人離れしたヒーローとしてではなく、どこにでもいるひとりの生身の人間として描くということでもある。その結果、1990年代後半以降、刑事の人物設定などもより踏み込んだ、屈折したものになっていく。

例えば、『沙粧妙子-最後の事件-』(フジテレビ系、1995年放送)では、浅野温子演じる刑事・沙粧妙子は、元同僚の恋人が殺人犯になってしまったことにショックを受け、精神が不安定になっている。そこには、決してヒーローではなく、むしろ人一倍傷つきやすいこころを抱えたひとりの繊細な人間が描かれていた。

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