今期5作も!「刑事ドラマ」はなぜ飽きられないのか 第1号から「相棒」「教場」まで歴史を紐解いて解説
福山雅治主演、大泉洋共演の『ラストマンー全盲の捜査官ー』は、FBI捜査官と警視庁刑事がタッグを組んで事件を解決するバディもの。ユーモラスな掛け合いや2人の複雑な因縁あり、推理やアクションの見せ場ありの刑事ドラマの王道といったところだ。
木村拓哉主演『風間公親-教場0-』にもバディものの要素があるが、刑事指導官と新米刑事という「先生と生徒」的な関係性なのがユニークだ。それもそのはず、これまで警察学校を舞台にしたスペシャルドラマとして評判を呼んだ『教場』シリーズの連ドラ化である。
また『特捜9 season6』(テレビ朝日系)は、人気刑事ドラマの最新シリーズ。警視庁捜査一課特別捜査班チームの活躍を描いたもので、井ノ原快彦演じる主人公の刑事は人情味豊かでもある(こちらは放送終了し、同じ枠でやはりシリーズものの『刑事7人 Season9』が始まった)。
桐谷健太主演の『ケイジとケンジ、時々ハンジ。』(テレビ朝日系)は、刑事、検事、そして判事というそれぞれの事件とのかかわりかたをフィーチャーした内容で、恋模様も交えたコミカルなテイストがある。
そして『育休刑事』(NHK)は、タイトル通り、金子大地演じる刑事が育児休暇中という設定。男性も育児休暇を、という世の流れを踏まえたアットホームなテイストの刑事ドラマだ。
このバラエティの豊かさこそ、刑事ドラマのもうひとつの大きな魅力だろう。医療ドラマ、恋愛ドラマ、学園ドラマ、ホームドラマなどさまざまあるが、これほど自由で多彩な作風で楽しませてくれるジャンルはほかにあまり思い当たらない。
では、刑事ドラマはなぜここまで幅の広い作風が可能なのだろうか?
刑事ドラマはセミドキュメンタリー方式から始まった
まず、刑事ドラマにつきものの犯罪が時代の動きを敏感に反映するということがある。時代とともに世の価値観や仕組み、ライフスタイルが変われば、それに応じて犯罪のかたちも変わってくる。たとえば、近年よく劇中に登場するようになった特殊詐欺やサイバー犯罪などは典型的だろう。つまり、刑事ドラマには本来ドキュメンタリー的な一面がある。
日本の「刑事ドラマ第1号」とされる『ダイヤル110番』(日本テレビ系、1957年放送開始)がまさにそうだった。このドラマのオープニングには「この番組は事実に基づいて構成され、資料はすべて警視庁ならびに全国の警察の協力によるものです」といったナレーションが入っていた。
いまなら、必ず最後に「登場する人物、団体、事件はすべて架空のものです」といったようにフィクションであることを強調するテロップが出る。ところが『ダイヤル110番』は逆だった。
つまり、実際に起こった事件をベースに物語がつくられていた。脚本家らスタッフは実在する事件から毎回題材を選び、警察からの協力資料をもとにドラマを制作していた。このスタイルは、セミドキュメンタリー方式と呼ばれた。
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