セブン立案「池袋西武トンデモ改装」で深まる迷走 ヨドバシカメラ入居後の全体像が取材で判明
最大の懸念点は、ラグジュアリーブランドのルイ・ヴィトンの移転だろう。現在店舗を構える北側1~2階は、2022年10月に6年ぶりの大規模改装を終えたばかり。にもかかわらず、計画では中央~南側に移転させることになっている。
「池袋西武とルイ・ヴィトンは10年以上かけて信頼関係を築き、その結果今回の改装やメゾネット(2階)増設が実現した。すべてをないがしろにする計画だ」と、そごう・西武関係者は憤慨する。
ほかの業界関係者も、「大規模改装直後の移転で(ルイ・ヴィトンの親会社である)LVMHの反発は不可避。訴訟を起こされてもおかしくはない」と口をそろえる。
ヴィトン以外のラグジュアリーブランドも移転となる。現在は本館の中央に位置するシャネルなどが駅から遠い南側へ、グッチに至ってはさらに離れた別館に移す計画になっている。
「ラグジュアリーブランドの配置は机上の空論。ただの『面積合わせ』にすぎず、ブランドからの了承は到底得られないのでは」。前出と別のそごう・西武関係者はそうみる。
改装案の右下、地下2階の端にまとめられた総菜売り場への影響も懸念点だ。
「おかず市場」と名付けられた池袋西武の地下1階総菜売り場は、スイーツと並ぶデパ地下の「ドル箱」。総菜や弁当は自宅への帰りがけなどに購入されるケースが多い。総菜売り場が改札階から分断されれば、顧客の利便性が落ちるのは明らかだ。
また、西武百貨店が展開する紳士・婦人服売り場もほぼ消滅している。この改装案が現実化すれば、池袋西武はもはや百貨店の体をなさない館となることは想像に難くない。
6月中旬の説明会は反発の声が予想
このように事実上の「百貨店崩壊」を招きかねない計画を、当事者であるそごう・西武が自ら作るのだろうか。ここで、冒頭の発言が飛び出したわけだ。
事情に詳しい関係者によれば、6月初旬、まずセブン&アイの常務執行役員の小林強氏らが、そごう・西武の林社長に同意を求めた。小林常務執行役員はセブン&アイで金融関連と百貨店・専門店事業を統括している。
しかし、そごう・西武は拒否。すると今度は井阪社長が林社長を呼び出し、改装計画をそごう・西武自らが作成したものにしろと迫り、受け入れないのであれば退陣まで求めたという。
5月25日にはセブン&アイの定時株主総会が行われ、井阪社長の再任など会社側の出した議案がすべて可決された。経営陣は株主の承認を得たことをチャンスと見て、総会終了後すぐにそごう・西武売却案件に着手したというわけだ。
関係者によれば、セブン&アイは6月中旬のうちにフォートレスやヨドバシホールディングス、地元の豊島区、そして地権者の西武ホールディングスなどを招集し、説明会を開催。こうした改装計画について説明するという。
だが、この会議でも参加者たちの反発は必至だろう。というのもJR池袋駅東口一帯は、2027年をメドに再開発を予定している。再開発計画の中核である池袋西武が百貨店の体をなさなければ、再開発自体が成立しなくなるからだ。
混迷を極めるそごう・西武の売却劇。セブン&アイが作った改装プランが火に油を注ぎ、さらに迷走しそうだ。
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