アメリカのベンチャーキャピタル(VC)大手のセコイア・キャピタルは6月6日、同社のグローバル事業を欧米、中国、インド・東南アジアの3地域に分割すると発表した。2024年3月末までに分割手続きを完了し、その後は3地域(の統括会社)がそれぞれ独立して事業を行うとしている。
それに伴い、ブランドの表記も改める。欧米事業は引き続き「セコイア(Sequoia)」を使うが、中国事業は漢字表記の「紅杉(ホンシャン)」をメーンとし、英語表記は(中国語発音のアルファベット表記である)「HongShan」に変える。インド・東南アジア事業については新ブランドの「ピークXVパートナーズ」を立ち上げる。
「分散型のグローバル投資ビジネスの運営は、ますます複雑化している。そんななか、権限集中型のバックオフィス機能を維持し続けるのは、利点よりも弊害のほうが大きくなった」
今回の事業分割の背景について、セコイアはファンドの出資者に向けた声明のなかでそう説明した。
資金調達も意思決定も中国で完結
とはいえ投資業界関係者の多くは、セコイアの説明を表向きのコメントとみている。5月31日に開催されたアメリカ議会の公聴会で、アメリカ財務省の担当官は「先端半導体、AI(人工知能)、量子コンピューターの分野で、アメリカ企業による対中投資の制限を検討中だ」と明言した。アメリカの投資会社は、その影響によるリスクが避けられないからだ。
セコイアは2005年に中国法人を設立。これまでに1000社を超える中国企業に投資し、そのうち130社余りが上場を果たした。その過程で経営の現地化を推進し、近年は資金調達から投資の意思決定に至るまで、すべて中国法人で完結するようになっていた。
「中国に投資しているアメリカの投資会社には2種類ある。ファンドの資金調達を主にアメリカで行い、投資の最終決定権をアメリカ本社が持つ投資会社と、(セコイアのように)資金調達も意思決定もグローバル化した投資会社だ。後者の場合は、これからも対中投資を継続できる」
あるPE(プライベートエクイティ)ファンドの幹部は、財新記者の取材に対してそう解説し、自身の見解を次のように語った。
「アメリカの投資会社のブランドは、かつては1つのステータスだった。それが今やリスクに変わった。とはいえ、ファンドの運営責任者であるGP(無限責任出資者)のレベルで事業を分割すれば、中国法人は(アメリカから)独立した主体と見なされ、リスクを軽減できるだろう」
(財新記者:杜知航)
※原文の配信は6月7日
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