「すべての条件が整えば、ヨーロッパにおける車載電池の生産能力は、2030年には域内の需要を満たせるだろう」
ヨーロッパの車載電池関連企業の業界団体、欧州バッテリー同盟(EBA)のプログラム・ディレクターを務めるトーレ・セケネス氏は6月9日、中国四川省で開催された国際フォーラムでのスピーチでそう述べた。
EBAは、欧州委員会の後押しにより2017年に設立され、欧州連合(EU)の域内で原材料から完成品までフルセットの車載電池産業の育成を目指している。セケネス氏によれば、EU域内の車載電池の年間生産能力(容量ベース)は現時点では80GWh(ギガワット時)に過ぎないが、7年後の2030年には13倍超の1083GWhに拡大する。一方、同年の需要量は1000GWhと予想しており、需給バランスの均衡が期待できるという。
そのうえで、セケネス氏は中国の業界関係者に向けてこう強調した。
「ヨーロッパの生産能力拡大は、その大部分を中国企業が担っている。(中国最大手の)寧徳時代新能源科技(CATL)や遠景動力(エンビジョンAESC)は、現地工場がすでに稼働または建設中だ。さらに、蜂巢能源科技(SVOLT)や中創新航科技(CALB)、億緯鋰能(EVEエナジー)なども投資計画を発表している」
拙速な海外進出に懸念の声も
欧州委員会は車載電池関連の一連の新法を策定し、EU域内での投資拡大や企業誘致の呼び水にしようとしている。例えば、2023年3月に公表した「重要原材料法案」は、EU域内で生産される車載電池の重要原材料の10%を域内(の鉱山)で採掘すること、原材料の域内加工比率を最低40%に高めること、域外の単一国に対する重要原材料の依存度を65%未満に抑えることなどを求めている。
そんななか、中国の車載電池業界はヨーロッパ市場のビジネスチャンスを掴もうと前のめりになっている。欧州委員会の法案に進んで呼応することで、(ヨーロッパの)顧客の需要を取り込むべく、現地への投資拡大と工場建設を競っているのだ。
だが、中国の業界関係者の一部は、中国企業の拙速な海外進出に対して懸念を深めている。車載電池の業界団体、中国汽車動力電池産業創新連盟の理事長を務める董揚氏は、冒頭の国際フォーラムで次のように発言した。
「中国の業界内では『事業拡大のために海外進出が必要』という考え方が主流だ。しかし一部には、『地政学的なリスクを考慮すべき』との(慎重な対応を求める)意見もある。さらに中国政府の官僚の間には、『中国企業の海外進出は(技術移転などを通じて)外国企業を助け、中国の優位性を脅かすことになりかねない』と憂慮する声もある」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月11日
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