入管法で露呈、日本の民主主義は死滅状態にある 難民審査も、改正プロセスも不透明すぎないか
柳瀬氏は、日本が難民に対して持っているアンビバレントな立場をよりよく表しているかもしれない。同氏は海外における難民支援を主たる活動とする「難民を助ける会(AAR)」の名誉会長であり、1979年以来、その活動が評価されている。そして、同氏は前述の通り難民参与員を長く務めている。
参議院法務委員会で示されたデータによると、難民審査参与員は100人以上いるのに、2021年に1378件、2022年に1231件、つまり審査全体の20%以上に彼女が関わっている。
仮に柳瀬氏が難民審査参与員の慣例にしたがい、月に2回、4時間ずつ審査していたとすると、2022年に1231件の審査を96時間、1件あたり5分未満で行ったことになる。こんな短時間でそれぞれのケースを把握し、判断することは本当に可能なのだろうか(この点について、柳瀬氏に取材で聞いたところ、同氏は1人ひとり丁寧に審査していると答えた)。
さらに重要なことは、柳瀬氏の発言に関する調査によって、日本の難民審査が、難民申請を却下する参与員に驚くほど偏っていることが明らかになったことである。
柳瀬氏は上記の通り、審査全体の20%以上を扱っているが、難民認定意見を多く出す参与員は配分を減らされたり、一部の参与員にはほとんどケースが配分されていないことが明らかになっている。そしてこのケースの配分は入管庁が一手に握っている。
参与員のインタビューを拒否されていた女性
こうした「偏重」は、難民申請者の生死を分ける結果をもたらしている。1月15日、大阪地方裁判所は、同性愛者であることによる迫害を恐れて母国を脱出した30代のウガンダ人女性を強制送還した日本政府の決定を取り消し、難民としての地位を認めた。この女性は本来受けられるはずの参与員によるインタビューすら拒否されていたのだ。
2019年に入管法改正の議論が出てからというもの、入管当局による残酷な対処を示す証拠が次々と明らかになっている。1つは、名古屋入管の職員の過失で死亡したスリランカ人のウィシュマ・サンダマリ氏の恐ろしい苦悩の映像だ。入管職員が強制送還を拒否するアフリカからの亡命希望者を拷問している映像も出てきた。
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