入管法で露呈、日本の民主主義は死滅状態にある 難民審査も、改正プロセスも不透明すぎないか

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1点目については、2021年末時点で、送還に応じない人のうち難民申請をしている1629人が対象となるが、なぜこれほど少ない人数に対して改正が必要なのか、疑問に思わざるを得ない。

一方、2点目については、入管が相当と考えれば監理措置に付されることで収容を免れる。しかし、申請者の知人や家族など監理人は申請者の行動に関し入管庁に報告義務を負い、違反があった場合は最高10万円の過料を科すとしている。

監理人が見つからなければ、収容されるが、弁護士や支援者は、本人との信頼関係が保てないことから監理人にはなれないという人が多い。特に日本に家族や友人がいない人にとっては、今以上に収容から逃れることが難しくなるかもしれないのだ。

法律家「マイナス面が多く、プラス面が少ない」

実際、入管法の改正については、法律の専門家からも反対の声があがっている。『外国人の人権―外国人の直面する困難の解決をめざして』の共著者でもある、弁護士の駒井知会氏は、「この法律はマイナス面が多く、プラス面が少ない。支持できない」と断言。明治学院大学の阿部氏も「手続きを抜本的に見直さないと、難民と認定されるべき人が、ノン・ルフールマン原則に反して、命や自由が脅かされる地域に追いやられる恐れがある」と懸念を示す。

日本は、自国の難民に対する無関心と、海外の難民に対する寛大な政策のバランスを取ろうとしている。つまり、少なくとも難民が自国にいない限り、日本は難民を支援するのだ。この分裂的態度は、緒方貞子氏が国連難民高等弁務官、いわば難民問題における世界のトップであった1991年から2000年の間に明らかになった。

緒方氏が難民救済という目的のために世界で最も重要な仕事をしていたとき、日本は69人、つまり1年に8人以下の難民しか受け入れなかった。「緒方氏は難民受け入れのために何もしなかった」と、当時、国境なき医師団(MSF)の日本代表だったマリーヌ・ビュイソニエル氏は私に語っていた。

2006年、私は緒方氏に直接、この意見に同意するかどうか尋ねる機会があった。「そうは思いません。この点については、かなり努力したつもりです」と、彼女は答えた。

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