入管法で露呈、日本の民主主義は死滅状態にある 難民審査も、改正プロセスも不透明すぎないか

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庇護を拒否された人は拘束されることがあるが、それも90日以内である。フランスの主要なNGO5団体の報告書によると、2022年の平均拘留期間は23日だった。亡命を拒否された人の大半は、いずれにせよ国外追放されることはない――これはひょっとしたら制度の欠陥といえるのかもしれない。

一方、日本の難民認定率は最近伸びてきているとはいえ、2%(2022年)と、G7のどの国と比べても極めて低い。人道配慮の数も2022年には飛躍的に伸びたが、そのほとんどがミャンマー出身者で、ミャンマー出身者を除くと、本国情勢で人道配慮を受けたのはわずか30人だ。しかも、日本では庇護を求める人々に対して、日常的に、不必要に収容が行われている。

国際人権法の研究者で阿部浩己明治学院大学教授は、日本の難民政策の基本的な欠陥について、こう指摘する。過剰に官僚化した法務省は、基本的に移民受け入れに反対しており、完全な無責任と不透明さで移民を管理している。その理由は、国境を守る義務と難民申請者の受け入れが矛盾しているからだ、と。

柳瀬氏「日本は難民に対して冷淡ではない」

難民申請が却下された後の不服申立てを担当する難民審査参与員117人(弁護士、ジャーナリスト、裁判官、外交官、その他海外経験者)の1人である柳瀬房子氏は、日本が難民申請者に特に厳しいというイメージを真っ向から否定する。それどころか、日本の難民受け入れ態勢は万全だと強調する。

「日本は難民に決して冷淡ではありません」と同氏は5月上旬に行われた東洋経済の取材にこう語った。柳瀬氏によると、申請手続きは不服申立てまで含めて平均して、最長で4年かかり、その間、申請者は働くことも許されている。現時点では、難民申請者は不認定を受けても何度でも再申請することができ、これにより彼らは強制送還を免れている。

今回の入管改正法のポイントは大きく2つに分かれる。1つは、難民申請の回数を原則2回に制限することによって、申請の繰り返しによる「送還逃れ」を排除すること。もう1つは、退去強制までの間、対象となる外国人を収容する代わりに、「監理人」に監視させる「監理措置制度」を設けることだ。

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