「窓のサッシが足りない」注文殺到の意外な背景 やっと本格化してきた「住宅の断熱性」強化

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そのため、窓、あるいはガラスを複層にすることで室内と外気の間に空気層を作り、室内の温度を外に逃がさないようにする、またはその逆で外の温度を室内に伝えにくくすることが必要となるわけだ。

なお、新築住宅では現在、ペア(二重)ガラスと樹脂など熱を伝えにくい枠を採用したサッシが主流となり、より断熱性が高いものなら三重ガラス・木製サッシによるものも導入されるようになっている。

断熱仕様の違いを視覚的にわかりやすくするため、温度センサーを用いて表示している事例(筆者撮影)

ところで、もともと、窓断熱リフォームはそれほど大がかり、高額な工事ではない。平均的な大きさのリビングなら30万円程度の費用で、しかも施工技術の進展により、現在では1日の工事で完了してしまうほどの手軽さで行えるケースもある。

それにもかかわらず、なぜこれまで窓断熱が盛り上がりを見せてこなかったのだろうか。その理由として、耐震化や加齢対応などのリフォームに比べて、人々が窓断熱の必要性と緊急性を感じにくかったことが挙げられそうだ。

大地震が起こるたびに耐震リフォームのニーズはその都度、一定の高まりを見せてきたし、加齢対応リフォームは「人生100年時代」と言われるようになる中で、必要に迫られるかたちで行われてきた。

イメージしにくかった断熱の効果

それに比べて窓断熱リフォームは、効果をイメージしにくかったのだ。暑さ・寒さは我慢できるものとして、人々に認識されてきた節すらある。毎年のようにエアコンを使わず熱中症になる人が絶えないことからもそれがわかるだろう。

余談だが、そうした状況は日本人がこれまで持っていた住まいや暮らしに関する価値観が旧態依然だったことを表すと筆者には感じられる。兼好法師の格言「住まいは夏をもって旨とすべし」を現代まで引きずっているようにも見える。

いずれにせよ、窓リノベ事業をはじめとする今回の国による住宅省エネ2023キャンペーンは、日本における住宅の断熱性向上におけるエポックメーキングな出来事、住宅断熱普及への転換点となるように感じられる。

少なくとも一過性のブームとして終わらせるのはとてももったいない。補助金ありきで始まった事態なのでそうなることが懸念されるが、継続的な動きとなることを期待させる状況がいくつかみられる。

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