「窓のサッシが足りない」注文殺到の意外な背景 やっと本格化してきた「住宅の断熱性」強化

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例えばサッシメーカーのLIXILでは、内窓リフォーム商品「インプラス」について、4月の受注が前年同月の約3倍となったとしている。「生産力を高めてはいるが需要が当初予想をはるかに上回っており、お客さまには3カ月ほどお待ちいただいている」という。

このほかのメーカーも同様のようだ。YKK APでは3月21日の時点ですでに、「納期遅延のお詫び」をホームページに掲載するなどしている。そうしたメーカー側の動きを受け、施工側にも混乱が生じている。

工事を請け負うリフォーム会社やホームセンターなどでは、新規工事受付を停止する動きがある。サッシや建具、ガラスなど窓工事を専門に行う事業者を確保しづらく、約束した施工時期を守れないなど、消費者トラブルが懸念されるからだ。

以上が、窓断熱を巡る大まかな現状だが、なぜ今、国は窓断熱を含むストック住宅の断熱強化を促進しようとしているのか。それは、2050年のカーボンニュートラルの達成を目指すうえで、民生分野においてストック住宅が最大のネックになっているからだ。

市街地を形成しているストック住宅。その多くが断熱性能に問題を抱えている(筆者撮影)

圧倒的に数が多い低断熱のストック住宅を放置しておけば、カーボンニュートラル達成はおぼつかない。そこで、国は大規模な補助金の拠出というかたちで、断熱性強化に本腰を入れたわけである。

ヒートショックのリスクを低減

カーボンニュートラル実現と、ストック住宅の断熱性強化の狙いが合致したことに加え、住宅の断熱性と健康に関する関連性が以前より具体的にわかってきたことも、ストック住宅の断熱性強化に勢いを与えている。

わかりやすい事例として、ヒートショックによる住宅内での死亡リスクがある。北海道などの寒冷なエリアより、温暖な地域のほうがその発症率が高いことが明らかになってきている。

温暖な地域でも冬季の夜間外気温は零度を下回るケースがあるが、断熱性が低い住宅では寝室とトイレ、あるいはリビングと脱衣所などの温度差により、体調に急激な変化をもたらすのだ。

浴室と脱衣所もヒートショックのリスクが高い場所(筆者撮影)

さて、ここで住宅の断熱において、窓断熱が重要な役割を担っていることについて改めて確認しておく。開口部(窓・玄関ドアなど)は、外壁や屋根などを含む住宅の部位の中で最も熱の出入りが大きい。

日本建材・住宅設備産業協会省エネルギー建材普及促進センターの資料によると、建物全体の中で開口部からの熱の出入りが冬の暖房時には58%、夏の日中の冷房時には日射の影響もあり73%にものぼるとしている。

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