膨大な資料のどこから何を読み取ればいいのか。「収益力」「将来性」「危険度」という3つの観点から解説する。
日々の仕事で最も多く、かつ多様な決算書に触れている職業の1つは、小社刊『会社四季報』の記者だろう。
同誌は日本で株式上場するすべての会社について、独自の取材情報や業績予想を掲載している。年4回の刊行に向けては、取材前に各社の直近決算の関連資料を読み込み、会社の先行きを占うカギとなりそうな数字や記述に目を光らせる。
見るべき点は個別企業や業界、経済環境によって異なるが、ここでは経営を分析するうえで役立つ普遍的なノウハウを「収益力」「将来性」「危険度」という3つのブロックで解説していく。
悪化の「理由」に着目する
最後に忘れてはならないのが、会社の「危険度」を見極める視点だ。経営が危うい会社は、投資先にも取引先にも選びたくないもの。決算書から発せられるシグナルを見逃してはならない。
まずBS項目で注目したいのは「棚卸資産(在庫)」だ。在庫は売上高を作っていくために必要不可欠なものだが、売上高の伸びに対して在庫の増え方が異様に大きい場合は注意したい。
売れる見込みのない「不良在庫」を抱え続けることは、さまざまなリスクをはらむ。陳腐化や劣化によって減損損失(営業損益や特別損益)を計上する必要が出てくるほか、保管スペースなどにかかる経費が膨張する危険もある。
1つの指標として、「棚卸資産回転率」を定期的にチェックしておくとよい。仕入れから売り上げるまでの在庫期間を表すもので、回転率が下がってきたら要注意だ。もっとも、大型案件や政府系案件など、納品までに時間を要する取引が増えてきた影響で在庫期間が長くなるケースもある。
回転率悪化が一概に悪いといえるわけではない。が、数字の背景を押さえることがここでも重要だ。
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