トヨタ「セルシオ」世界の高級車に並んだ日本車 打倒「Sクラス」の心意気がレクサス成功を導く

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セルシオに懸けるトヨタの意気込みは、トヨタ自体のCIマークを変えさせたことでもわかる。セルシオが先かCIが先かは定かではないが、ともかくも今に至る「楕円形の中にT」のエンブレムを最初に装着したのは初代セルシオであった。

高級サルーンの最大の市場は、当時も今も北米である。彼地でSクラスの牙城を崩すためには、“トヨタ”であってはいけないという判断は賢明だったろう。セルシオのために北米で新たに用意された販売チャンネルが“レクサス”である。アメリカではレクサスLS400として売られ、好調な販売を記録した。今に至るレクサスブランド成功の礎は、初代セルシオが築いたのである。

マイクロソフト創業者のビル・ゲイツが乗っている写真を見たことがある。既存のお金持ちのみならず、既成概念から逃れたい若いセレブにも好評をもって迎えられた。もっとも、欧州では北米ほどの成功はなかった。依然としてメルセデスやBMWの牙城を崩せず、その状況は現在も変わりない。

30年以上にわたる神通力

レクサスといえば、日産にはインフィニティが、ホンダにはアキュラがある。いずれもそれぞれのプレミアムブランドとして世界各国で展開されている。しかし本拠地たる日本では、インフィニティやアキュラの看板は見かけない。トヨタではなくレクサスとして開発された初代セルシオの気迫が、30年以上にわたって神通力を発揮しているといえなくもない。

2代目セルシオ。偉大な初代に比べてマニアからの評価は落ちる(写真:トヨタ自動車)

クルママニアの間では、1994年にデビューした2代目セルシオ/レクサスLSは初代に比べるとコストダウンが散見されるという見解がある。バブル崩壊が叫ばれる中で開発された新型だから的外れな意見でもないだろう。

その国のクルマのデキ不出来は、その国の経済状況に左右される。初代セルシオは、幸せな星の下に生まれたといえる。

1990年代のクルマはこんなにも熱かった
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田中 誠司 PRストラテジスト、ポーリクロム代表取締役、THE EV TIMES編集長

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たなか せいじ / Seiji Tanaka

自動車雑誌『カーグラフィック』編集長、BMW Japan広報部長、UNIQLOグローバルPRマネジャー等を歴任。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。EVニュースサイト「THE EV TIMES」編集長および、モノ文化を伝えるマルチメディア「PARCFERME」編集長を務める。

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加納 亨介 エディター・ライター

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かのう こうすけ / Kousuke Kano

物心ついた時からクルマ好き。ウルトラマンにも仮面ライダーにも興味が湧かず、少年時代はひたすらクルマのプラモデルを作り、成人してからはひたすらクルマを乗り回す生活。その果てにクルマ雑誌の編集者となった。趣味はスキーと山登り。

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