ホンダは、1990年代に「クリエイティブ・ムーバー」と呼ぶモデルを続々と登場させ、ヒットを連発させた。それは1994年の「オデッセイ」、1995年の「CR-V」、そして1996年の「ステップワゴン」と「S-MX」だ。
これらクリエイティブ・ムーバーは、ピンチの中で生まれたモデルであったが、ホンダを大きく成長させる救世主となった。
ピンチが生んだ画期的な4モデル
これらクリエイティブ・ムーバーとは、どんなものだろうか。それは、「使う人の生活をより楽しく、豊かに広げていける『生活創造車』を目ざしたホンダの新発想のクルマ」だという。正直、具体性がなく雲をつかむような説明だ。
しかし、そこからは「新しいクルマを送り出したい」というホンダの意気込みが伝わってきたし、実際にクリエイティブ・ムーバーは画期的なものばかりであった。
第1弾モデルとなったオデッセイは、3列シートを備えたMPV(多人数乗車モデル)であったけれど、車高が低くてセダンと同じヒンジ式の4枚ドアを備えていた。
MPVといえば箱型のミニバンが常識だったところに、セダンライクのまったく新しいスタイルを提案したのだ。
第2弾のCR-Vは、SUVである。しかし、その内容は当時として常識外れであった。当時のSUVは「クロスカントリー4WD」と呼ばれており、ラダーフレーム構造のボディにオフロード走行を重視した足回りを持つ、屈強なオフローダーのことであった。
ところがCR-Vは、乗用車と同じモノコックのボディを使い、セダンやステーションワゴンのような乗り心地を実現したのである。これにも大いに驚かされた。
そして、ミニバンであるステップワゴン。これも、乗用車と同じモノコックを採用するFF(前輪駆動)車で、当時のミニバンが商用車ベースのFR(後輪駆動)だった中で先鋭的だった。
最後のS-MXは、ステップワゴンの全長を切り詰めた背の高い箱型のコンパクトカー。トヨタ「ルーミー」をはじめ、今となっては珍しくないボディタイプだが、当時としては目新しいものであった。
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