今あえてスーパーカブを買った筆者の率直な思い オートバイの楽しさとモビリティの原点ここに

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クラッチレスを実現するために、自動遠心クラッチと4速MTを組み合わせたことが、イージーライドと操る喜びを両立している。

ライダーの下にガソリンタンク、その下にエンジンとトランスミッションがほぼ垂直に並ぶという、自転車に近い重量バランスも見逃せない。走り出せばすぐに、慣れ親しんだ乗り物のように安心して操ることができる。

エンジンとチェンジペダル。チェーンなどがカバーされていることがわかる(筆者撮影)

パワーユニットのまろやかさも、特筆できる。空冷単気筒エンジンの鼓動や左足で操作するトランスミッションのタッチなど、すべてがソフトで、エンジンやチェーンがカバーされていることもあり、気になるノイズもない。

乗りながらなごんでしまう。それでいて排気音は歯切れよく、オートバイに乗る楽しさも味わわせてくれる。

ちなみにこのまろやかさ、以前乗った110はここまでではなかった。見た目だけでなく乗り味も、プレミアムなスーパーカブというコンセプトをしっかり実現できていると感じている。

もう1つ、110より好ましいのは、シートの高さだ。日本人の体格に合わせて低めにセットされた110に対して、C125はグローバルモデルということもあって、シート高が40mm以上高い。

都内のバイク駐車場にて。ヘルメットを収納するためリアキャリアにボックスを装着した(筆者撮影)

それでも身長170cmの自分なら楽に両足が着くし、シートに対してハンドルがやや低く、少しだけ前傾の姿勢になるうえに、ひざの曲がりがゆるやかになるので、モーターサイクルに慣れ親しんだ身には扱いやすいし、疲れにくい感じがする。

唯一、気になるのは、多くのスクーターにはあるメットインスペースがないことだが、これはリアキャリアにボックスをつけることで解決した。

1つの「理想形」として

スーパーカブといえば、燃費の良さも愛される理由の1つ。満タン法で計測したのはまだ一度だけだが、そのときの数字は57.4km/Lだった。

給油中の様子。燃料タンク容量は3.7Lだが、これで約200km走れるのだから驚く(筆者撮影)

WMTCモードのカタログ燃費68.8km/Lには劣るけれど、当たりのついていない下ろしたての車両で、あっさり50km/Lをオーバーしてしまったのは、すごいというほかない。

ホンダはクルマだけでなく、バイクについても電動化を進めることを明言しており、先日交換式バッテリーを搭載した原付一種登録の「EM1e:」を発表した。

筆者は電動モビリティを否定するつもりはない。というか、これの原付二種仕様が出てきたら欲しいとさえ思う。でも、50km/L以上走れば、それだけで十分エコだと思うのも事実。つまり、環境対策のアプローチは1つである必要はなく、目的に最適な手法を選ぶのが自然だと感じている。

そしてなによりも、自分ひとりで移動するなら「クルマは過剰だ」ということを教えられた。道路占用面積も環境負荷も小さなスーパーカブこそ、エンジン付きパーソナルモビリティの理想形だと思う。しばらく生活のパートナーとして付き合っていきたい。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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