今あえてスーパーカブを買った筆者の率直な思い オートバイの楽しさとモビリティの原点ここに
2021年には環境性能に優れた新エンジンを搭載するとともに、前輪のみではあるもののABSが標準装備されたことで、その思いはさらに強くなっていた。でも同じころ、海外で発売された“ある仕様”が、気持ちを押し止めることになる。
C125はグローバルモデルで、改良型は日本に先駆けて生産国のタイとヨーロッパで発表されたのだが、そこには全身を黒に近いマットグレーで統一し、シートを赤としたカラーが追加されていたのだ。
とりわけヨーロッパでは、この色だけが設定された。現在もいくつかの国のウェブサイトを確認すると、現地で買えるスーパーカブはマットグレーだけになっているようだ。
クルマでは長年フランス車やイタリア車を乗り継ぎ、バイクもモトグッツィやベスパを所有してきた筆者にとって、たしかにマットグレーのC125からはヨーロピアンテイストを感じた。
それとともに、スーパーカブの開発当時のエピソードを思い出した。ホンダの創業者である本田宗一郎氏と経営を司っていた藤澤武夫氏が、自転車取り付け用エンジンの「カブF型」に代わる新型車の構想を練るために、ヨーロッパ視察を行ったという話だ。
このときは実際に現地のモペッドを何台か買ってきて、開発の参考にしたという。こんなエピソードからも、筆者がヨーロッパ風のスーパーカブに惹かれるというのも、そんなに的外れではないと勝手に考えている。
ところが、日本ではなかなかこのボディカラーが設定されない。そのうちに2022年になり、110にもキャストホイールとチューブレスタイヤ、前輪ディスクブレーキおよびABSが装備されるようになった。
価格はC125より10万円以上、安い。おまけに日本製で、ちょっと心が揺らいだ。まもなく還暦を迎えることになり、気持ちが110に傾いていく中で、2023年を迎えることになった。
すると年明け早々、C125のカラーバリエーション変更が発表に。なんとマットグレーが日本でも売られることになった。思い悩む筆者の気持ちを、天国にいる本田氏と藤澤氏が察してくれたような気がして、すぐにホンダに買いたい旨を伝えた。
“スーパーな乗り物”という実感
生産遅延はクルマに限った話ではなく、スーパーカブもその影響を受けているが、真っ先に注文を入れたこともあり、約2カ月後の3月下旬に納車となった。
あれから2カ月あまり。距離はそんなに伸びてはいないけれど、東京23区内をメインに、あちこち走り回った印象を簡単に言えば、やっぱり60年、1億台を達成したことを実感する“スーパーな乗り物”ということになる。
なによりも、乗っていておもしろい。スーパーカブは究極の実用車、つまりコモディティを目指した車両なのに、趣味の相棒、つまりマシンとしても十分に満足できるのだ。
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