平和都市・広島を侮辱した会議となったG7サミット 議論すべきは武器供給でなはく停戦だったはずだ

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忘れていけないことは、日本もアジアでは、中国に対してウクライナと同じ位置にあることだ。それが台湾問題だ。アメリカやNATOの戦略に従えば、日本は中国に対する台湾防衛の防波堤の役割を担うことになる。

アジア研究の第一人者で筑波大学名誉教授の進藤栄一氏は、「東アジアにあって、日本もまた周辺諸国の歴史とその言い分を理解できず、反中的・反韓国・反朝鮮的な民族主義的感情を高揚させ、自ら孤立を深めていくのではないか」と『日本の戦略力』(筑摩書房、2022年、44ページ)で、日本の孤立を憂慮している。

日本は西欧の国ではない

当たり前のことだが、日本は西欧の国ではないということを自覚しなければならない。それは地理的にも文化的にも、また経済的、政治的つながりにおいても、歴史的にそうなのだ。その歴史を理解することができず、西欧の言い分だけを鵜呑みにして、戦略を練ることは、自らの孤立を深めるだけである。

今回のG7で日本は、近隣諸国の緊張をかえってあおる結果を生み出したのではないかと危惧している。これまで、戦後平和のために努力をしてきた日本に対して、アジア諸国の多くは、まだ信頼と尊敬をもっている。中国との戦争などもってのほかである。

高度成長で発展するアジアに対して、支援こそすれ、それを潰すようなことをすべきではない。それが日本にとって結果的にいい結果をもたらすからだ。

広島でこのようなサミットを行うということの意味は、平和の初心に返れという天啓だった。ましてや、武器供与などもってのほかだったのだ。広島の平和公園にある原爆の子の像に、再び戦争の悲しみの血の涙を流させないでほしい。   

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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