平和都市・広島を侮辱した会議となったG7サミット 議論すべきは武器供給でなはく停戦だったはずだ

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ことはこれだけではない。台湾問題も浮上し、台湾を守るべく日本がそれに参加する可能性も出てきた。台湾をめぐって、日本は中国にとってのウクライナのようなアメリカとロシアの代理戦争をさせられるかもしれないのだ。

私はわずかの期間だったが広島市の戸坂小学校と牛田中学校に通った。1945年8月6日当時、まだ広島市の郊外の寒村にすぎなかった戸坂小学校の建物は、原爆被害を受けることなく校舎は戦前の面影を残していた。

平和を願う日本の象徴こそ広島

ここに多くの被爆者が逃げ延び、そこで亡くなった遺体をその校庭で毎日のように焼いたのだという話を聞いたことがある。昭和30年代の学校ではスライドを使った平和授業もあり、子ども時代に焼き付いた原爆のむごたらしい映像は、今も私の記憶の中にある。

「ノーモアヒロシマ」。戦争による無辜の民を殺戮するような行為を2度と起こすまいという誓いは、戦後広島のみならず日本全国に根付いた願いだった。戦争という行為そのものをやめさせるという願いは、平和運動として続けられ、日本が戦争に巻き込まれることを、どうにかこれまで防いできた。

そしてそれは、戦争をしている当事者からつねに一定の距離を置き、どちらも支持することなく、ひたすら平和のための停戦を願う気持ちとして、戦後一貫して培われた日本人の共通の願いであったのだ。 

平和を願うという行為は一見、無関心と卑怯という非難を外部からは受けやすい。しかし、たとえそう非難されても、けっして戦争を起こさず、参戦せず、他国の戦争に対してつねに中立をたもち、停戦への願いと努力をするというのは実はとても勇気のいることであり、それこそ日本国憲法に従ったものだったはずだ。

その平和の象徴こそが、戦争被爆都市・広島だった。その広島で停戦と平和のための話し合いをするというのなら、当然だと頷ける。ロシアとウクライナとの停戦合意を取り付けるためにG7諸国が会談し、平和への道筋をつけるというのならまだしも、戦争当事国の一方の大統領を招聘し、その戦争の拡大と武器支援を約束したというのだから、驚くしかない。

そして、アジアやアフリカ諸国の多くがある意味冷静に中立を保つ中、日本を含むG7の国が、積極的にウクライナを支援するというのだ。

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