「会社で肩身が狭い」50代を乗り越えるための視点 「会社にいさせてもらえるのだから」と黙る人へ

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自身も50代の鈴木さんは、世代の影響が強いのではと見る。「私たちは誰かに相談したり、自分の感情を表現したりといったことをやってきませんでした。何となく我慢をして過ごすことが正しいと思い育ってきた人が多いような気がします」

風向きが変わり始めたのは2015年ごろ。「人生100年時代」や「ライフシフト」という言葉が広がり、50代の社員から「自分」の相談が少しずつ増えていった。

最初は「雇用延長してもらってもポジションはあるのだろうか」「面白くて働いているわけではない状態を続けてもいいのだろうか」という相談が大半だった。最近は「定年前の50代でやっておくべきことはないか」「自分のセカンドキャリアについて考えたい」という、前向きな相談も受けるようになった。

一時期は研修費がつかなくなったキャリア相談室が、なぜ存続できたのか。鈴木さんはこう説明する。「相談室のメンバー全員が、社内の別の仕事を兼務しています。費用がかかれば、定量的な成果を出すことが求められる。相談も専用の部屋は設けず、会議室を借りているから固定費がかかりません。細く長く。これが続けることができたポイントです」

また、キャリア相談室は人事部から独立した組織にしている。人事部の色を感じると異動や肩たたきなどを警戒し、相談をためらう人が出てくるためだ。

「もやっとしている人にこそ来てほしい」

相談に対し、鈴木さんは「こうしたほうがいい」という具体的な提案はしない。相手の話を聞き、一緒に相手が思考を整理できるようにする。「相談に来る人は副業や転職など外に道があることは当然知っています。ただ、一歩踏み出せるかどうかは別。副業なんて自分にはとてもできないという人が大半です」。

この数年で会社のキャリア施策も整ってきた。先日、全社員が対象のセミナーを開いたところ、意外にも50代の参加率が一番高かった。「キャリア相談」や「キャリア研修」という名称だと、問題意識を持っていないといけないが、セミナーだと気軽に参加できるのでは、というのが鈴木さんの気付きだ。

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