客単価4800円「牛角の高級店」はアリかナシか 「成城学園前」駅近でシャトーブリアンを提供

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肉の切り方が特徴的な「厚切り上ハラミ」(1738円)。ハラミやヒレのような部位は鮮度が重要なため、提供直前にカットするという(撮影:大澤誠)

そのため当然ながら、同店にはカットのベテランを配し、研修においてもカット技術を重視しているそうだ。

例えば牛タンは食感がコリッとしているので、薄切りで提供されることが多い。しかしタン元というサシの入った部位を厚切りにすることで、食感を感じつつやわらかく楽しめる。

厚切りハラミは大判にカットすることで肉汁が最後まで逃げず、ジューシーかつボリューム感も楽しめる。切り込みを細かく入れたのは、中まで火を通しやすくする工夫だ。

エビやホタテなど4種の海鮮が入った「石鍋海鮮チゲ」(968円)。鰹と昆布のだしがスープの辛味を和らげている(撮影:大澤誠)

またそうした素材を十分に味わえるよう、たれも工夫している。通常のしょうゆだれのほか、マイルドな酸味で肉の味を引き立てる「塩ぽん酢」、ピリ辛でさっぱり食べられる「ちり酢」などを用意。練り唐辛子をちょいとつけるのもおすすめだそうだ。

肉以外の料理にも細かなこだわり

肉以外の料理でも独自性を表現している。こだわりは、「だし」だ。海鮮チゲ鍋や冷麺などに鰹節・日高昆布のだしを使用し、和の味わいを加えているのだ。

「Gyu-kaku冷麺」(968円)には端材を活用した牛肉のしぐれ煮をトッピング(撮影:大澤誠)

「日本はだしの文化で、スープを好む方が多い。加えて、当店のターゲット層は食のリテラシーが高い方。ベースの味が重要だと考えている。冷麺などもスープまでおいしく召し上がっていただけるよう、店内でていねいにとっただしを使用している」(同)

上記のように、和食のお店にも似て細かくこだわりを凝らしている牛角成城学園前店。実際の客の入りはどうなのだろうか。

「ターゲットの30代以上会社員、ファミリー、シニア層からは好評で、週末は前店の従来型牛角より好調に推移。ただ、食べ放題を主として利用されていた学生や若者層の来店が少ないため、メニューやコースの見直しを適宜行っている」(同)

ターゲットである「ハレの日需要」は狙いとしては当たっていたが、平日も含め満席とまでは行かないようだ。

理由の一つとして、実は主要な客層である学生を取り込めていないことがある。こちらは牛角よりワンランク上の価格設定のため仕方がない面もある。

また単純に、店舗の存在があまり知られていない。外観からも牛角との違いがわかりにくい。

実際、従来型の牛角だと勘違いして訪れた客が、「食べ放題がない」と聞いて帰ったケースもあるそうだ。

「牛角」のイメージが定着しているだけに、成城学園前店としての特徴がわかりにくいのだ。また、紛らわしい店名も要因だろう。

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