日本人が「一汁三菜」に強いこだわりを持つ事情 令和になっても家事に残る「昭和型の価値観」

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阿古:ただ、SNSの場合、それが自慢できるぐらいに、食べるのがもったいないようないい料理ができたから投稿しているのであって。私も自分が作った料理はほぼ投稿しませんが、栗ご飯を作ると投稿したくなりますよね(笑)。

前島:必殺みたいなものですよね。あげるやつって。

阿古:それなのに、見る側はそれを当たり前に毎日やっていると思っているという問題はずっと指摘されているのですが、その認識はなかなか広がらず、料理をする人はプレッシャーを感じてしまう。

30~40代の女性が一汁三菜思考に囚われている

前島:一汁三菜思考も結構根強いですよね。当社のサービスは副菜と主菜で構成されているんですけども、一汁三菜へのこだわりは結構根強いなと感じていて、複数の主菜と複数の副菜という構成にしたんです。当時インタービューした中でも、食卓にどういう構成で出したいですかって、30~40代に聞いても、最低でも一汁三菜は、みたいなのがあって。

――最低でも、なんですね(笑)。

前島:ちょっと豪勢すぎますよね。で、一汁は用意できるけれども、三菜のほうが大変すぎるという意見がかなり強くて。それで、三菜側をこちらで用意しようということになりました。

つくりおき.jpが提供する4人前5食分(1万4980円)の惣菜宅配の例。利用者からは「一汁はできるけれど、三菜が難しい」という声が届いていたという(写真提供:Antway)

阿古:今まで調べてきてわかったのですが、そういう30~40代の親御さんというのは一汁三菜ブームのときに子育てされているんですよね。「きょうの料理」が副菜をテキストで特集していたりとかして。私の30代の友人も、鍋のときでも副菜をつけなければいけないとか言っていて……。え、鍋だけじゃダメなのって。

前島:高度経済成長期に輸入でさまざまな食材が入ってきて、当時は専業主婦世帯が多くて一定の時間もあったので一汁三菜がはやったのもわかります。ただ、今は状況が違うので、思想も変わっていってほしいな、と。あと、もう1つその背景にあると感じているのは、子どもへの愛情表現が食事であるという、かなり強い信仰があるということです。

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