顧客のために店は開け続ける!震災直後の混乱の中、いわき市のスーパー店長は何をどう判断したか
ようやく、震災の混乱から落ち着きを取り戻しつつある福島県いわき市。3月27日に全面的な営業再開にこぎつけ、市民への商品提供基地となっているイトーヨーカ堂平店の岩野秀之店長が、震災直後からの対応ぶりを語ってくれた。
3月11日の地震発生のとき、店内には、かなりの顧客がいた。激しい横揺れを受けて、商品の半分が棚から落ちたのはもちろんのこと、壁にひびが入ったり、ホワイトデ−のキャンペーンのために設置した什器類が倒れるなど、店内は大変な状況になった。
岩野さんが直ちに部下に指示したのは、顧客を店外に出さず、店内にとどめることだった。店外で何が起きるか、危険を感じたからだ。そうした中で、従業員たちは顧客にマスクを配布した。壁の崩壊などで土ぼこりが立っていたからで、「従業員が独自に動いた」という。岩野さんは、乳幼児など子供連れの顧客に毛布を配ることを指示した。余震によって天井から物が落ちてくる不安を否定できなかったからだ。
そして、すべての顧客を1階コンコースに集めた。そのときエレベータが動いていたが、危険を感じて止めた。
1時間後、揺れが弱まったことを見極め、岩野さんらは道を挟んで道路の反対側にある駐車場へと顧客を誘導した。外は寒かったので、顧客に使い捨てカイロを配ったが、顧客は1人として苦情を言わず、口を閉じたまま黙って受け取ったという。17時前に店を閉めたときは「ほっとした」が、翌日はまた大変な事態が待ち構えていた。