顧客のために店は開け続ける!震災直後の混乱の中、いわき市のスーパー店長は何をどう判断したか

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 店内は危険なので使えない。入り口にあるドアとドアの間の風防エリアで営業を開始した。断水、停電という状況下で、顧客が品物を求めて殺到することが予想され、店を閉めることは考えられなかった。

顧客の動きは予想以上だった。早い人は朝5時から並び始め、10時の開店前には、外に800人ほどの顧客が列をつくっていたという。この日も寒い朝だったので、1人ひとりにカイロを配った。「カイロを受け取ったお客様が泣き出したりした」という。

そのとき、並んでいた1人の男性が突然、道に倒れてしまった。偶然、顧客の中に看護師がいて、面倒をみてくれた。少し容態が改善したところで、店内に運び、経理担当者が介抱し続けた。

「救急車を呼ぼうとしたところ、重症患者でなければ病院は受け入れない、と断られた」。

40歳くらいのその男性に自宅の住所を聞くと、岩野さんは絶句してしまった。「四倉から歩いてきた」と男性は答えたからだ。 同じいわき市内とはいえ、同店がある平地域から男性顧客の家までは、15キロメートルほど離れている。おそらく、余震が収まらない中で、一睡もせず、あるいは何も食べないまま地震、津波で混乱した道路を早朝から歩いてきた可能性が高かった。

岩野さんは、男性に食べてもらおうとパンを手渡したが、大事に握ったまま食べようとはしなかった。「ご家族に持っていきたいのだろう」と思った岩野さんは、次にパンをナイフで半分に切って渡したが、少ししか口にしなかった。

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