「人生ままならない人」が買い物に走る納得の理由 私たちは「コントロール感」を欲しがっている

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その結果、悲しみを感じていた人は気分が和らいでいるとわかりました。お金を使わずにカートに入れるだけで、「買い物効果」が見られたのです。ちなみに、怒っている人にも同じ実験をしましたが、架空の買い物では怒りは消えていませんでした。

その理由は、怒りは主に「誰に対して怒っている」とか、「この状況に対して怒っている」と、特定の「人」や「状況」が標的となっているからです。ですから、心理的コントロールを上げる買い物では気持ちが紛れないのだと研究者は分析しています。

確かに「あのクライアントは本当にひどい」と怒りを抱えているときに買い物をしても、なかなか怒りは消えないものです。

企業側としては、悲しい人の買い物体験をもっと有効なものにするよう、商品の色を豊富にし、好きな色を選んでもらえるようしたり、またはイニシャルを入れたりなどのカスタマイズを可能にしたりすることも検討するとよいでしょう。顧客の心理的コントロール感をさらに高められ、顧客には喜んでもらえ、Win-Winの関係になれるでしょう。

他にも「採血」に関する実験があります。皆さんも、採血をする際、頭では必要な検査とわかっていても、「痛かったらどうしよう」と不安に駆られたことはありませんでしょうか。

どちらの腕にするか決められるだけで、安心できる

南カリフォルニア大学のリチャード・ミルズらの調査では、採血の際、「左右どちらの腕にしますか?」と看護師に聞かれるだけで、このネガティブ・アフェクトが著しく軽減することがわかっています。

今はどの病院でも「どちらの腕にしますか?」と質問されると思いますが、少なくともアメリカでは昔は看護師が決めていました。プロの看護師が、どっちの腕の血管のほうが採血しやすいか判断して決めるので、とても合理的でしょう。

しかし、患者からすれば、ネガティブな感情の出る採血。必要な検査として、自己意志ではなく「やらされている感」が強く、心理的コントロールが弱いのです。

そういう際、自分でどっちの腕から採血するかコントロールできるだけで、不安度が減少し、満足度も上がることが研究でもわかっています。

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