「人生ままならない人」が買い物に走る納得の理由 私たちは「コントロール感」を欲しがっている

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左右、どちらの腕から採血するかは本当に小さなことですが、それをコントロールできるだけでも、ネガティブな感情が減少し、人は安心することができるのです。

枠がある薬のパッケージのほうが、「境界効果」で人気

ここに2つの薬のパッケージがあります。

私は現在、「行動経済学コンサルタント」として、「いかにビジネスに行動経済学を取り入れるか」、企業にコンサルをしています。

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クライアントから、「商品パッケージについてアドバイスがほしい」と聞かれることもありますが、今時点で私が勧めるとしたら、左側の薬のほうです。

コンサルタントとしてのわが社の役割はクリエーティブでセンスの良いデザインを選ぶことではなく、科学的なエビデンスに基づいて「人が求めるデザイン」を選ぶこと。したがって「左がいいでしょう」とクライアントに勧めるからには、ちゃんとした根拠があります。

世界的なパンデミックが収束しつつあるとはいえ、ロシア・ウクライナ戦争は終わらず、シリアとトルコで天災が起き、景気後退も深刻です。世界情勢が不安になっているとき、人は「状況にコントロールされている」という無力感から、不安になります。

そこで参考になるのがデューク大学で一緒だったキーシャ・カットライトが卒業論文の一部として発表した「境界効果(Boundary Effect)」という理論です。

彼女の実験では、「自分以外のもの(人・状況)にコントロールされている」と強く感じている人は、ボーダーや囲み枠など境界線があるパッケージを好むことがわかりました。

左のパッケージは商品名が四角い境界線で囲まれています。その視覚効果によって無意識にコントロール感があると感じられるので、不安な人を惹きつけるのです。

パッケージデザインや広告ビジュアルは仕事の一環として注目していますが、富裕層向けのものは開放的で、境界線がしっかりあるデザインはあまり見かけません。

「景気が良くて経済が上向きだと境界線のないパッケージが売れる」という実験はないので断言はできませんが、仮説としては成り立つでしょう。

相良 奈美香 行動経済学コンサルタント/行動経済学博士

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さがら なみか / Namika Sagara

オレゴン大学卒業、同大大学院 心理学「行動経済学専門」修士課程および、同大ビジネススクール「行動経済学専門」博士課程修了。
デューク大学ビジネススクールポスドクを経て、行動経済学コンサルティング会社であるサガラ・コンサルティング設立、代表に就任。その後、世界3位のマーケティングリサーチ会社・イプソスにヘッドハントされ、同社・行動経済学センター(現・行動科学センター)創設者 兼 代表に就任。現在は、ビヘイビアル・サイエンス・グループ(行動科学グループ、別名シントニック・コンサルティング)代表。

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