「人生ままならない人」が買い物に走る納得の理由 私たちは「コントロール感」を欲しがっている

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しかし実社会では、なかなかすべて自分の思いどおりにはいかないもの。つまり、つねにコントロール感を感じられるとは限らないのです。

直感的にも、「他人や状況に自分の人生をコントロールされる」というのは嫌だというのはわかると思います。調査でも、「コントロール感」の減少がネガティブな感情を生み出し、そのネガティブな感情が人間の非合理な意思決定や行動に影響を与えていることがわかっています。

また、「自分以外のもの(人・状況)にコントロールされている」という感覚はうつ病、ストレス、不安関連障害等と身体的にも悪影響が出ます。そんな大事なコントロール感をもう少し詳しく見てみましょう。

買い物によって、コントロール感を取り戻す?

この「心理的コントロール」は、消費者の消費行動にもあらわれます。

悲しかったりストレスがたまったりすると、買い物をしたくなる――。これも心理的コントロール感を取り戻したいという気持ちの表れなのです。

人が悲しみを感じるのは、自分以外の人や状況にコントロールされている場合が多くあり、「私は何をやってもダメだ」という無力感に襲われ、「手っ取り早く主導権を取り戻したい」という欲求が強まります

買い物は、自分の意志で選んだものを、自分の力(お金)で自分のものにできる。つまり簡単に「自分でコントロールしている」と感じられる行動です。

問題は、そうやって買い物をしていたらいくらお金があっても足りないこと。しかし、ミシガン大学のスコット・リックらの実験によって、「お金を使わなくても気分が良くなる買い物がある」とわかりました。

被験者にネットショッピングのサイトを見せ、気に入った商品を選んでカートに入れてもらいます。決済はしないので、昔のウィンドーショッピングのようなものです。

次ページカートに入れるだけで「買い物効果」が見られた
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