コニカミノルタ、1166億円減損の裏に「甘い体質」 「当たり前のことをできる会社に」と社長が反省

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しかしコニカミノルタにおいて、同事業の拡大は思うようには進まなかった。

主要市場のアメリカでは、コロナ禍で予防診断のために来院する患者が減った。コロナ収束後も、医療スタッフの不足で思うように検査を実施できなかった。遺伝子検査は症例数が事業の支えになるが、利益よりも症例数を重視してデータを集める競合の出現も成長を脅かした。これらの事態で事業成長の機会が買収当初の期待を下回り、減損計上に至った。

コロナ禍の影響などは不測の事態だったといえる。しかし大幸社長は、新事業の見通しに次のような「甘さ」があったと述べた。「症例数が増え、その結果収益が上がると見通していた。症例数が増加するという設定について、もう少しリスクケースを見る必要があった」。

今回、プレシジョンメディシン事業以外でも買収企業で減損損失を計上している。画像IoTソリューション事業で2016年に買収したドイツのモボティクス社に関連する80億円の減損だ。

こちらも部材不足や欧州の景気低迷の影響といった不可抗力の要因がある。ただ、買収シナジーとして期待していたサービスの市場開拓の遅れもあって見通しが外れた。

生産現場でも「甘さ」

この見通しについての「甘さ」、実は新事業に限った話ではない。同社の発表する業績予想は近年、下方修正が相次ぐなど、見通しが楽観的だと言わざるをえない状況だった。

中でも2019年は、7月、11月と四半期決算を発表するたびに業績を下方修正。複合機の新しい製造拠点の立ち上げが想定どおりに進まなかったことなどが修正の理由だった。2度の業績下方修正後、それまで1050円前後で推移していた株価は、一気に750円周辺にまで下落。株価低迷は現在まで続く。

2021年には、長野県辰野町のトナー工場で爆発事故を立て続けに起こした。同年7月に発生した爆発火災の検証・対策をしたうえで生産を再開したが、1週間後に再び爆発。幸い人的被害はなかったものの、外壁の一部が吹き飛ぶほどの爆発だった。最初の検証・対策が十分だったのかと問われても仕方がない。

「『当たり前のことを当たり前にできる会社に戻す』ということが至上命題であり、私自身に課せられた使命。過去の反省と学びを今後の経営に最大限に生かす覚悟で、再び成長軌道に乗せることに全力を尽くす」

大幸社長の語った「当たり前のことを当たり前にできる会社」とは、自社に都合のよいベストなシナリオに沿って事業を進めるのではなく、リスクを織り込んだ計画の下、環境の変化に対応できる組織であり経営だ。まず必要なのは、体質の見直しだろう。

吉野 月華 東洋経済 記者

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よしの・つきか / Tsukika Yoshino

精密業界を担当。大学では地理学を専攻し、微地形について研究。大学院ではミャンマーに留学し、土地収用について研究。広島出身のさそり座。夕陽と星空が好き。

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