コニカミノルタ、1166億円減損の裏に「甘い体質」 「当たり前のことをできる会社に」と社長が反省

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コニカミノルタのアンブリー買収時の会見
2017年の米アンブリー社買収決定時の会見。コニカミノルタの山名昌衛社長(当時、右)は事業成長に向けての自信を語っていた(撮影:尾形文繁)

「ベストな条件が3つ4つ重ならないといけない計画ではなく、少々の変動があっても耐えられる計画を作って、実行していかなければならない。世の中そんなに甘くない」

複合機大手・コニカミノルタが5月15日に開いた2023年3月期の決算説明会。その場で大幸利充社長兼CEO(最高経営責任者)が自戒の言葉を口にしたのには理由がある。企業買収を中心に立ち上げた新事業において、同社は巨額の減損損失を計上したのだ。

減損計上額は1166億円。このうち、遺伝子やタンパク質から患者の体質を分析する「プレシジョンメディシン事業」ののれんや無形資産の減損が1035億円に上る。これにより2023年3月期の業績は、営業損失951億円、最終損失1031億円となった。

黒字予想から一転、4期連続の赤字となったうえ、赤字額は過去最大となった。業績見通しが大きく下振れし、さらには3月末の期末配当を無配としたことから、大幸社長や山名昌衛会長などが報酬を一部自主返上することになった。

成長余地はある新事業

プレシジョンメディシン事業は、2017年にアメリカのアンブリー社・インヴィクロ社を買収することによって始まった。このうちアンブリー社は、世界トップクラスの遺伝子解析技術を持つ。買収額は2社合わせて1200億円に上った。

「精密医療」などと訳されるプレシジョンメディシンは、生まれ持った体質の影響を受けやすいがんなどの治療において、患者の体質に適した治療を提案できると期待されている。遺伝的・体質的な疾患の早期発見や予防、治療の助けになるともみられている。

コニカミノルタは、トナーの製造などで業務提携していたコニカとミノルタが2003年に経営統合して発足した。2社の看板事業だったカメラは、デジタルカメラの一般化に伴い製品競争力を維持できなくなったため、統合以降は複合機を強化してきた。

現在1兆円を超えるコニカミノルタの売上高のうち、半分強を占めるのが複合機関連だ。だが複合機は、ペーパーレス化で市場拡大が見込めない。このような状況下、同社が遺伝子解析分野の買収に踏み切ったのは、故なきことではない。

アメリカでは遺伝子診断に保険が適用されており、予防や治療、投薬のためのプレシジョンメディシンが普及している。他国においても、手軽さや予防診断への期待から普及の余地がある。潜在的に成長の伸びしろがある事業だ。

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