「ChatGPTで仕事消える」嘆く人が見えてない真実 「生成AI」を使いこなすためには知識が必要

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私は子どものころにリンパが腫れているのを虫歯の痛みだと思いこんで歯医者に行きました。そこから虫歯ではないと診断されて大学病院に紹介状を出され、原因はリンパだとわかり、適切な治療を受けるまでにずいぶんと時間がかかり悪化してしまったことがあります。

同じように、もし自分の身体に起こっている症状を正しく伝えられず、「奥歯が痛い、どうすれば治る?」などの質問をAIに投げかけたら、AIは歯に関する問題として認識し、誤診してしまうかもしれません。やはりここでもAIに命令する側に目的や知識が求められます。

以上の理由から、リスキリングは最小限でよいのではないかと感じました。人力による確認が必要であるうちは、人の手が不要になることはありません。また、仕事で目的を持ったり正確な指示(命令)を伝えたりすることは、AIに関係なく必要なことです。

AIがどんなに便利でも、仕事の相手は「人間」

もう1つ理由があります。それは、AIがどんなに便利でも仕事の相手は人間だということです。

メールやチャットなど便利なものがあっても、対面の打ち合わせのほうが話が進んだり、お互いの顔を見て話すことで信頼関係が強くなったり、モチベーションを上げるための励ましや、厳しいことをやんわりと伝える思いやりが求められたり、仕事でそういった人間性のようなものがいらなくなることは、この先もないと思います。答えだけが正解であれば、すべての仕事がうまくいくわけではないのです。

今回はテキスト生成AIをメインに話しましたが、画像や音声の生成による著作権侵害問題やフェイク画像によるトラブルなど、生成AIには多くの解決していかねばならない課題があります。

インターネットが普及し始めたときも未知の問題に対する不安はたくさんありました。でも、今は当時より気軽にインターネットを利用しているのではないでしょうか。コンピューターウィルスやハッキングに対するセキュリティー対策が当たり前になったように、生成AIに対する対策も企業にとってはビジネスチャンスになりますから、状況が悪化の一途ということはないと思います。

すでに大手SNSなどでは対策を検討し始めています。不安になりすぎず、でも、時代の流れはしっかりと受け入れて、AIをより使いこなすためにも、今までどおり自分に必要なスキルを磨いていくのがいいと思います。

Jam 漫画家・イラストレーター・ゲームグラフィックデザイナー

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じゃむ

人間関係の悩みを描いたマンガ「パフェねこシリーズ」がTwitterで累計50万以上リツイートされ話題となる。著書に『多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)のほか、『にゃんしゃりで心のお片づけ。』(PHP研究所)、『マンガ版 ちょっとだけ・こっそり・素早く「言い返す」技術』(マンガ担当/三笠書房)、『言いにくいことはっきり言うにゃん』(笠間書院)、『まねきねこのうた』(秋田書店)、『続 多分そいつ、今ごろパフェとか食ってるよ。』(サンクチュアリ出版)などがある。

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