押しボタンが押されたことに気づけるようになって、意識的に反応を変えるだけで、問題が改善することも多い。
ちょうど、オートパイロットモードで運転中に意識的な制御に切り替えて、前方の渋滞箇所を回避するルートに切り替えるようなものだ。
反射的反応なんて原始的で取るに足らないものと無視したくなるかもしれないが、実は強力で、人間以外の動物にとっても我々人間にとっても重要な動作モードの1つである。そして単純な動物の場合には、もっとも重要な役割を担っている。
細菌も集団として協力し合い、戦い合う
反射的反応のパワーを物語る例として、もっとも単純な生物である細菌の繁栄が挙げられる。
我々人間が長時間働かずに生活費を稼ごうとするのと同じように、細菌という生物マシンは、同じ時間内にできるだけたくさんの食物エネルギーを摂取しようとする。そしてそのために、完全に台本どおりの「行動」を取る。
複雑だが自動的な化学的手段を使って、餌に近づいていってむさぼり食い、有害物質を避けるのだ。さらに細菌は、特定の分子を放出して信号を送り合うことで、集団として協力しあうことまでする。
「細菌の『行為』は目を見張るほど多様である」と神経科学者のアントニオ・ダマシオは記している。
細菌は互いに協力しあい、非協力的な個体を避ける(「鼻であしらう」と表現する研究者もいる)。ダマシオはその一例として、複数の細菌集団にフラスコの中の資源を巡って競い合うよう仕向けた実験について述べている。
一部の細菌集団は攻撃的に見える反応を示し、戦い合って大きな損失を出した。一方、ほかの細菌集団は仲良くしあって生き延びた。この状態が数千世代にわたって続いたのだ。我々人類におけるスパルタやナチスドイツ、そして平和主義国家と同じものが、大腸菌の世界にも存在するのだ。
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