日本の自動車メーカー、回復への長い道のり《ムーディーズの業界分析》


 また、一部の大手船舶会社は、東京より北の港湾への輸送を削減または停止しているため、サプライチェーン上、東北からの部品調達に依存することが実質的に不可能になっている場合がある。

重要な点は、1つの部品の供給が途絶えたら、自動車組み立てが実質的に停止されるということである。部品メーカーが、エンジンモジュール、ナビゲーションシステム、デジタルパネルといった自動車部品に組み込む電子チップの供給が途絶えた場合の影響を考えても、自動車組み立てが、マイナーな部品と思われるものの供給停止の影響をいかに受けやすいかがわかる。

多くの自動車メーカーが用いるカンバン方式や、重要な部品の在庫を圧縮するオペレーションが、今回は逆に状況を悪化させている。たとえば、ホンダは、部品供給不足により、組み立てを4月4日まで延長して停止すると発表した。その結果、日本の自動車メーカーは、現在の生産停止計画に基づけば、20万台以上の生産減少となる、とムーディーズは推定している。

緊急時には、自動車メーカーは部品の調達先を変更する可能性があるが、それにはコスト上昇を伴い、時間もかかる。技術と供給能力を有する調達先を探し、新たな調達先が生産を開始するためのツールや原材料を確保し、製品の質および生産基準を検証し、新たな調達先(他国の場合もある)から組立工場に製品を輸送する物流を検討しなければならない。

新たな調達先からの輸送には、よりコストがかかることもある。輸送費を加える前でも、迅速な生産開始、一時的な供給契約という条件下では、新たな調達先の価格が既存の調達先より高水準となることが考えられるためである。全般に、新たな供給先からの調達により、日本の自動車メーカーのEBITマージン(通常は3~7%)は数パーセント引き下げられる可能性がある。

こうした課題は、国内組立工場のみならず、一部の主要部品を日本の調達先に依存している海外組立工場にも影響を与える。たとえば、サプライチェーン上の問題が、一部の日本の自動車メーカーの米国における組み立てにも一時的に支障を来すことになる。

国内需要の縮小

日本の三重災害による経済的な苦境下で、短中期的には国内の自動車需要が縮小するであろうが、11年度後半には回復するだろう。まず、日本政府がその費用を3090億ドルと見積もっている復興需要に対応する必要があるため、目先は国内の自動車販売が減少するだろう。同時に、消費者心理の悪化により、回復にさらに遅れが生じるとみられる。しかし、最終的には津波で失った自動車を再購入する必要があり、自動車に対する需要が上向くであろう。ただそうした買い替え需要が生じるのは11年後半となるとみられる。

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