日本の自動車メーカー、回復への長い道のり《ムーディーズの業界分析》
VP−シニア・アナリスト 臼井 規
震災前の財務体質の健全さによって影響度に差:トヨタとヤマハの格付けはリスクにさらされやすい一方、日産とホンダは相対的に良好な位置づけ
東北地方・福島県を中心とした地震、津波、原発事故という三重の災害は、日本の自動車セクター全体の格付け変更にはつながらない。しかし、震災の余波により、少なくとも2011年度(12年3月期)上半期を通じて各社のオペレーションおよび業績が悪化し、一部のメーカーの格付けに影響が及ぶ可能性がある。特に、ムーディーズの現在の予想よりサプライチェーンの寸断による障害が大きい場合である。自動車メーカーは、家電などの、世界的に重要な他の国内産業より弱い状況にある。これは、より集中度の高い事業特性を有し、大半の工場での操業を停止しなければならず、被災により操業が困難となっている調達先も多岐にわたるためである。
下記は、自動車メーカーで損害の規模の大きいものから降順で示したものである。
1. トヨタ自動車(Aa2、見通しはネガティブ)*1:トヨタは、10年に品質上の問題が発生した後、収益回復を図っている段階である。潤沢な流動性を有するが、国内での生産停止を3月26日まで延長した。
2. ヤマハ発動機(A3、ネガティブ):10年5月の増資により資本構成を強化したが、10年後半からの収益回復を維持する必要がある。同社は、二輪車、船外機、ウォータービークル、特機製品、自動車エンジンの一部の工場における生産を一時的に停止した。
3. いすゞ自動車(Baa1、安定的):いすゞは業績改善を背景に、震災に伴う短期的な操業停止があっても、その影響を格付けの範囲内にとどめることができるであろう。同社の商用車の操業は一定の打撃を受けたが、迅速に再開される、とムーディーズは予想している。被災地の再建需要から、同社の商用車に対する需要は、乗用車より早く回復する可能性が高い。
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