増える70歳以上のシニア破産、身近な転落の経路 現役時は乗り切っても、人生の終盤に落とし穴

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高齢者単身世帯の増加で懸念されるのが、シニア破産の急増だ。総務省の家計調査(2022年)によると、65歳以上の高齢者単身世帯の実収入は月額13万4915円。税金、社会保険料が1万2356円なので、可処分所得は12万2559円となっている。一方、消費支出は14万3139円だから、不足額は2万580円。年間では約24万7000円の赤字となる。

収入では社会保障給付(年金など)が12万円余りで9割を占め、事業・内職収入が1707円、仕送り金769円という状況だ。支出でもっとも多いのは食費の3万7485円で全体の4分の1。次いで多いのが意外なことに交際費で1万7893円で12.5%、光熱・水道、交通・通信、教養娯楽がそれぞれ1万4000円程度となっている。

1日あたり約1200円の食費でまかない、普段は読書や音楽を楽しみ、月に何度かは友人らとの付き合いに興じる。そんなつつましい暮らしぶりが目に浮かぶようだ。

もっとも、このデータはあくまで平均値である。たとえば住居費が1万2746円となっているが、都会の賃貸住宅に暮らしている場合はその3~4倍はかかる。それだけ毎月の赤字額が増えている可能性がある。いずれにしても、家計データからは資産を取り崩していかなければ暮らしていけないことが数字からもうかがえる。

60代以上のシニア破産が全体の4分の1を占める

当然ながら生活が破綻するケースも増えている。日本弁護士連合会(日弁連)の「2020年破産事件及び個人再生事件記録調査」では、60歳代以上の「シニア破産」は全体の4分の1を占めている。このうち60歳代の破産は16.37%。2002年の14.23%から約2%増えただけだが、深刻なのは70歳代以上だ。2.73%から9.35%へと大幅に増加している。

破産に至った負債の原因(全世代)は、「生活苦・低所得」が25.68%、「病気・医療費」9.70%、「負債の返済(保証以外)」8.53%、「失業・転職」7.32%、「事業資金」6.71%、「生活用品の購入」6.14%など。このほかに「浪費・遊興費」4.73%、「ギャンブル」2.99%と、破産者自身の行動に起因する例もみられる。これらのうち、事業資金以外は引退した高齢者にとっても切実な問題であることは間違いない。

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