「西成で78日生活」30歳彼が体当たりで掴んだ幸運 筑波大→大阪あいりん地区「異色ルポ」誕生背景

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「なんだか裏歌舞伎町とも言える大久保に興味が湧いてしまって、ヤクザマンションを引き払って、大久保のアパートに引っ越しました。今やすっかり安全な街なんですけど、それでも血なまぐさかった時代を思うとドキドキします。歌舞伎町については、それこそ一冊出せるくらい詳しくなったんですけど、ただちょっと負い目があるんです。僕は、コマ劇場も見たことないし、グリーンプラザも泊まったことがないんです。できれば当時の歌舞伎町を、自分の目で見てみたかった、という叶わぬ思いはありますね」

荒川河川敷で暮らしていたとき(國友さん提供)

半年後の自分ですら想像がつかないので、飽きない

『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』『ルポ路上生活』『ルポ歌舞伎町』という重量級の単行本を3冊出してきた國友さんだが、これからはどのような仕事をしていきたいと思っているのだろうか?

「本を出すペースは速くないと思うんですけど、一つ一つは深く濃い本だと思います。それぞれをミックスさせたら良い漫画を作れるんじゃないか? と思ってて。今は、漫画のシナリオを作る勉強をしています」

確かに今まで國友さんが取材してきた内容は、漫画にしたら面白そうなエピソードが多い。

ただ過去のネタをしがむだけではなく、新しい本を作ることも忘れていないという。

「草下さんに、『今度は寿町(横浜のドヤ街)に住んで本出してよ』って言われてます。それで今、実際に住み始めています。想像していた横浜と、実際の横浜は印象が全然違っていて楽しいですね。西成は78日も暮らしたので、もはや故郷のように街が身体に染み付いてます。東京の路上や、歌舞伎町も同じ様に感じます。寿町もそんな故郷の一つにしたいです。これからそんな街をいくつも作っていきたいですね。その過程で稼げるなら、言うことはありません」

結局、会社員には一度もならず、非会社員として働いている國友さんだが、後悔はないだろうか?

「振り返ると、本当に会社員にならなくて良かったなとめちゃくちゃ思いますね。編集者って足りていないので、穴埋めのような感じで色々な媒体から声がかかります。収入も理由のひとつですが、半年後の自分が何をしているかですら想像がつかないので飽きないですよね」

國友さんは実に楽しそうに赤裸々に話をしてくれた。

やりたいことを見つける想像力と、実際にやりとげるたくましさを感じた。

今後も骨太な書籍はもちろん、たくさんのジャンルで活躍されることを期待したい。

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村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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