日刊SPA!の編集者に相談すると、
「もし出版社で働きたいなら、出版社に直筆の手紙を出すと良いよ」
と独自の方法論を紹介してくれた。その編集者自身、金融系から出版系に転職する際、出版社へ直筆の手紙を出したと言った。
編集者は、彩図社の名物編集者、草下シンヤさんを紹介してくれた。
「黒沢さんに出会ってから、アンダーグラウンドの本をたくさん読むようになって、草下シンヤさんの事も知ってました。『実録 ドラッグリポート アジア編』など著作も読んでいました。言われた通り、手紙を書くことにしました」
5000~6000字くらいの長文の直筆手紙を書き、草下さんに送った。
「西成で生活するんで、単行本出してくれませんか?」
すぐに草下さんから電話があり、会社に来るように言われた。
「手紙には彩図社で働きたいって書いてたんですよ。それで呼ばれたので、『就職が決まった!!』って喜んでました。急いで彩図社に挨拶しに行きました」
草下さんは、國友さんを見ると開口一番、
「土方じゃないんだから手紙で就職決まらないよー」
と言った。
「『國友君が今までに書いた文章ある?』って聞かれて、ホームレスを追跡して、どんな生活をしているのかをレポートした大学の卒業論文を見せました」
卒論を読んだ草下さんは、
「土方じゃないんだから手紙で就職できないけど。逆に國友君が土方行ってみたらどう?面白ければ本にする」
と言った。
「もともとは東京で1カ月ホームレス生活をするって企画で文庫を出す予定だったんです。ただ、僕としては単行本で出したかった。その時、黒沢さんと行った西成を思い出して、『西成で生活するんで、単行本出してくれませんか?』ってお願いしました」
そこからはガチで西成で生活をした。
ドヤに泊まり、飯場に入って肉体労働をして稼いだ。西成で飯を食って、酒を飲んだ。
知り合う人もみんな西成の人たちだ。
「黒沢さんと来た時は、『老人の楽園みたいだな』と思ったんですけど、実際に住んでみたら全然楽園じゃなかったです。シャブ中だったり、人殺しだったり、普通に就職していたらまず出会わなかったであろう人たちがめちゃくちゃいて。これは正解だった!! と思いました」
実は筆者(村田らむ)は、この取材をしている最中の國友さんと、たまたま通天閣の下でお会いした。声をかけられて少し話をしたのだが、
「西成に長期間住んで本を出す」
と聞き、すごい体当たりのルポをする人がいるもんだ!! と驚いた。本も面白そうだし、売れそうだな、と思った。
ただ彩図社の草下さんは冷静だった。
「とりあえず面白そうだから本書かすけど、初版3000部で、たぶん重版もかからない。でも本を出せば名刺になるから、それを使って頑張っていって」
というようなことを言われた。
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