後には引けなくなった。
「オリンピックの開会式からはじめます!!」
とその場しのぎの返事をした。
働きながら2カ月もホームレス生活をおくるなんて無理だろうと思っていた。だが必要に迫られて開始日を決めたら段々できる気がしてきた。
都庁の下でホームレス生活スタート
開会式でブルーインパルスの飛行機が飛翔する様子を見た後、都庁の下に行き、ホームレス生活をはじめた。
「そこから2カ月間家に帰らなかったですね。寝泊まりも入浴も段ボールの上やテントの中でしてました。ただ仕事はしなければならないので、一応Wi-Fiだけ持ち歩いて、たまに編集部に行って仕事しました。最初は無理だと思っても、身体が順応していきますね。今は、基本的にやってやれないことは何もないんじゃないか? と思ってます。
ホームレス生活はやってみると楽しかったですね。飯なんて本当に2カ月で数百円しか使わなかったです。炊き出しって思ったよりもたくさん開催されてて、ホームレスの人たちは一番効率の良い炊き出しの回り方のスケジュール表を作ってるんです。お腹空かせるために、わざわざ歩いて移動するという感じでした。
価値観結構変わりましたね。世の中で当たり前に“こういうもの”だと思われていることが、じつは全然違う形をしてるんじゃないか? って。そんな事に気がつき始めました」
取材は楽しかったが、膨大なデータ量を原稿化するのは大変だった。ホームレスとの会話を録音したデータが100時間以上あった。全部を聞き直して、使える部分を抜き出す作業だけで2週間かかった。
「1日18時間くらい働いてました。それでなんとか頑張って本を出版することができたんですけど、思っていたほど売れませんでした。自分としては本当に180度違った世界を見れたので、これは本当に売れる本になるんじゃないか? と思ってたんですよ。50万部くらいいくと思ってました。残念でしたけど、ただ後悔は全然ないですけどね」
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