「1年が終わった後に、なんかやる気なくなっちゃったんですね。どうせ芸術やるなら、もうちょっとがんばって東京藝術大学を狙ってみるか……と、1年間休学することにしました」
しかし、休んでみたもののなかなか受験勉強ははかどらなかった。特に勉強はせず、週末に風景のデッサンを描く、そんな生活だった。
「暇な日が続いて、人生で初めてちゃんと本を読みました。最初に読んだのが李小牧さんの『歌舞伎町案内人』でした。たぶん父親の『ハードボイルドに生きろ!』という教えが顔を出したんだと思います」
『歌舞伎町案内人』は、歌舞伎町ナンバーワンガイドを自称する李小牧氏が、不夜城と呼ばれた時代の危険な歌舞伎町を紹介する本だ。
「時間があったのでノリで歌舞伎町に行きました。その時は怖くて、最深部までは行くことができなかったですね。すごく広い得体の知れない街に感じて、区役所通りを歩いている人たちが全員怖く見えました。後で住んでみたら、思ったよりずっと狭い街だって気がつきましたけど」
そんな日々の過ごし方で、東京藝術大学に合格するはずはなかった。入試に失敗して、筑波大学に復学した。
「絶対に大学より面白い!!」休学して旅に
復学した頃、たまたま電波少年の猿岩石の企画『ユーラシア大陸横断ヒッチハイク』をビデオで観た。
「番組を見て旅行に興味が湧いてきました。ふと親父といつも自転車で那須の山を登っていたのを思い出しました」
父親にはことあるごとに、東京から那須まで自転車で旅したことを自慢された。
國友少年は、そのことを素直に「すげえな」と思っていた。
「でも『それって実はすごくないんじゃね?』って思い始めました。それで夏休みに筑波から鹿児島まで自転車で旅することにしました。自分としてはものすごい大冒険のつもりだったんですけど、3週間くらいで辿り着きました。なんか……めちゃくちゃ拍子抜けしました」
終わってみたらこんなものか……と思った。残念ながら価値観は変わらなかった。
「ただ道中、御殿場市のユースホステルに泊まった時に、バイクで旅してるオジサンから『行かずに死ねるか!―世界9万5000km自転車ひとり旅』(石田ゆうすけ)という本を読みなさい、って勧められたんです」
この本は筆者が7年半かけて自転車で世界一周を旅した紀行エッセイだった。
「この本を買って、福岡発東京行きのフェリーの中で読んだんです。もう夢中になって、『こんな旅は、絶対に大学より面白い!!』と思って、また休学しました」
4年生に上がるタイミングだったので、周りの人たちは就職活動をはじめていた。
國友さんはそんな人たちをしり目に、休学をして旅に出ることにした。
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