映画では、礼山(イェサン)と舒川(ソチョン)の2つの高速道路のSAと、もう1カ所一般道にあるSA(日本の道の駅のようなところ)でロケが行われている。
礼山は韓国の西海岸、忠清南道にある郡で、高速道路30号線(唐津-盈徳高速道路)に礼山SAがある。舒川も礼山と同じく忠清南道にあり、高速道路15号線(西海岸高速道路)のSAだ。
韓国では国土のほぼ全域に高速道路が張り巡らされており、およそ300カ所のSA/PAがある。
トイレの他に食堂、売店などがあるのは日本と同様だが、なぜか音楽ソフトや日用雑貨を売る店もあって、ご当地のお土産が並ぶ日本のSA/PAとは少し雰囲気が違う。ひと昔前の日本のSA/PAのような印象を受けるのだ。
韓国では都市間高速バスが発達しており、中長距離の高速バスに乗ればSAで休憩してくれるので、自分で運転しなくても雰囲気を味わうことができる。
サービスエリアが映画で持つ意味
映画の中で、主人公の家族の妻が「なぜ、SAで生活していたのか」と聞かれるシーンがある。その質問に彼女はこう答えている。「サービスエリアには何でもあるから……」と。
実際、この家族は高速道路で食堂やトイレを利用するだけでなく、洗面所で髪を洗ったりもしているし、高速道路の周囲にはゆったりとした空地も残されているので、テントを張るのも好都合である。
この映画の監督、イ・サンムン氏は、ホームレスの家族を描く舞台として「偶然、高速道路のSAが、人が暮らすのにかなりいい環境であることに気づいた」と、映画のパンフレットの中で述べている。
「食べ物や公共施設はもちろん、周辺に小さな林のように作られた休憩スペースまであり、すべてのことを解決できるこの場所で、家族が遊ぶように暮らしたらどうなるのか」と発想し、この映画に結実したという。
「産業化時代を象徴する『高速道路』と伝統的な価値が込められている『家族』という単語が出会って起こる特別なアイロニー」が、映画の原点となっている。
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