※この記事には映画『高速道路家族』のストーリーを一部含みます。
4月下旬、“高速道路”がタイトルに入った韓国映画『高速道路家族』(韓国語の原題も『高速道路家族』)の公開が国内各地で始まった。
タイトルだけ見ると、家族揃って高速道路を使って旅をするロードムービーのようなストーリーを想起させるが、実際の映画に出てくる家族は、クルマどころか家もないホームレスである。
夫婦+子ども2人の4人家族が、高速道路のサービスエリアの空き地でテントを張って暮らし、食事は停車する他のクルマのドライバーに、「財布をなくしたのでガソリン代として2万ウォン(日本円でおよそ2000円)貸してください」と手あたり次第に声をかけて得たお金で、SAの食堂や売店で買ってしのぐという、日本ではなかなか考えられない底辺の暮らしを描いている。
『半地下の家族』と似た世界観
映画の前半はSAが舞台だが、夫がこの行為で警察に捕まると、お金をたかられたある女性が、残された妻と子どもを不憫に思い、経営する中古家具店に住まわせて、残された3人の家族に束の間の平穏が訪れる……というストーリーで、後半になると高速道路はほとんど出てこない。
家族を助けた女性も、過去に自分の子どもを亡くしており、その家族の微妙な影と高速道路家族の厳しい現実の交錯が映画の見どころである。
この映画は、第27回釜山国際映画祭で、「『パラサイト 半地下の家族』を超える衝撃作!」などと絶賛されたとされるが、実際に2019年に公開され、アメリカのアカデミー賞で非英語作品として初めて作品賞を受賞するなどさまざまな賞に輝いた『半地下の家族』と通底するところが多い。
『半地下の家族』も主役は4人の家族で、高級住宅地に住む家族と関わることで生活が変わるが、最後に悲劇が訪れる。
『半地下の家族』では、家政婦を雇えるような高級住宅地の富裕層と大雨が降れば浸水するような半地下の家が対比して描かれているが、『高速道路家族』では、SAに次々とやってくる高級車と、そこへ行ってお金をたかるホームレスとの対比が描かれる。SAは、まさにその接点としての舞台となっている。
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