超一流は、結果が出なくても「頑張らない」 ACミラン本田圭佑が逆境に慌てない理由
メディカル・トレーナーの仕事はひと言でいえば、選手が100%の力で試合に臨めるようコンディションを整えること。試合前後のケアはもちろんですし、ケガをしてしまった選手のリハビリも行います。
こうした仕事を通じて筆者は、ミランの「レジェンド」と呼ばれる選手たちを、内部から観察し続けてきました。今は監督を務めているインザーギ、「ミスターミラン」と呼ばれたマルディーニ、黄金期を支えたガットゥーゾ、ピルロ、セードルフ、カフー、カカ、ロナウジーニョ、ロナウド。イングランドのスター、ベッカム。さらにはシェフチェンコ、イブラヒモビッチ……。
きら星のごとき、名だたる選手を間近に見ながら、陰日向にサポートをしてきたわけですが、たとえ一流の選手であっても結果が出ないときは当然あります。そんな状況の中でも、結果を出し続け、歴史に名を残す選手がいる一方、苦境に陥るとそのまま這い上がれずに終わってしまう選手もいます。
才能の差ではなく、「考え方」の差
結果を残す選手と、消えてしまう選手。違いは何だったのでしょうか。逆境から這い上がる選手の資質とは何なのでしょうか?強靭なメンタル?恵まれた才能? 運を引き寄せる力?
筆者は、両者に才能の「差」はなかったのではないかと見ています。もし違いがあるとするならば、それは「考え方」。逆境と言われていた時期をどう考え、過ごしていたかの差、それだけだったと思うのです。
どんな一流選手であっても、ケガをして試合に出られない、内容がよくても試合に勝てない、戦術の違いでベンチを温める……そんな状況は必ず訪れます。そんな中、「今まで以上にがんばる」「血のにじむような努力をする」「自分を見つめ直す」「やり方を大きく変えてみる」。
一般的には、結果が出ないと、そうしなければならないと考えてしまいます。結果の出ない現状を「否定」し、どこか別のところに正しい「解」があると思い込んでしまう。少なくとも「このままで大丈夫」とは思えないはずです。筆者もイタリアに渡る前は、当然、「努力」こそ正しい発想だと思っていました。
しかし、超一流になれる選手は違います。
彼らは絶対に「今はダメだ」「自分が間違っている」とは考えません。なぜなら「もっと努力しなければダメだ」は、これまでの自分を否定することになるからです。彼らは、結果に振り回されて、ペースを乱すよりも、継続することを大切にしているのです。
ミランで見てきた超一流たちの思考は、とてもシンプルです。
「焦らず。毎日コツコツ」
それが、超一流の行動学です。「それだけ?」と驚かれるかもしれません。
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