「誠意を見せた岸田首相」首脳会談・韓国の反応 半導体など経済や文化面での交流拡大も期待
岸田文雄首相が2023年5月7日の日韓首脳会談で、歴史問題に関連して明らかにした立場は、①歴代首相の立場を継承する、②元徴用工に対し遺憾の意を表明する、③広島に落とされた原子爆弾の韓国人犠牲者慰霊碑を韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領とともに参拝する、と要約できる。
岸田首相は5月7日、首脳会談を終えた後の記者会見で、元徴用工被害者に対し「当時の厳しい環境のもとで多数の方々がたいへん苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む」と述べ、この問題に対して初めて自らの立場を表明した。
直接的な謝罪を示したものではないが、これまでより少し進展した表現だ。これまでの首脳会談では元徴用工問題に対して直接的な謝罪の代わりに、歴代内閣の立場を継承すると明らかにしたことがあった。
日本政府は本気度をアピール
岸田首相はまた、歴史問題に対する「歴代内閣の立場を継承」を再度明らかにした。「2022年3月に尹大統領が訪日された時、私は1998年10月に発表された日韓共同宣言を含め、歴史認識と関連した歴代内閣の立場を前提として継承していることをはっきりと申し上げた」と述べ、「このような政府の立場は今後も揺るがない」と付け加えた。
既存の立場を繰り返しながらも「はっきりと」「揺るがない」といった表現を使ったことは、歴史問題に対する日本政府の本気度をアピールしたものだと思われる。
岸田首相は「尹大統領の決断で(2023年)3月6日に発表された措置について韓国政府の努力が進んでいる中、多くの方が過去のつらい記憶を新たにされながらも、未来のために心を開いていただいたことに感銘を受けた」として、韓国政府が発表した元徴用工問題の解決策に言及し、「心が痛む思いだ」と述べた。
岸田首相は尹大統領と元徴用工問題、歴史認識問題に対する認識を共有した後、5月19日からのG7首脳会議が開催される広島で、原爆による韓国人犠牲者の慰霊碑をともに参拝しようと提案した。これに尹大統領は「広島訪問を契機に、われわれ2人の首脳は広島市の平和公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑をともに訪れ参拝することにした」と回答した。
韓国大統領室は岸田首相の発言が、歴史問題に対する真摯な立場の現れだと受け止めているようだ。大統領室の高位関係者は、「会談の前に両国の首脳側近たちが過去の歴史問題について協議したり、発言を事前に調整したということはない。岸田首相がそれなりの発言を準備し、自発的に述べたものと思われる」と打ち明ける。