ウィリアムズバーグ・サミットの政治声明文書では、最終的に、「われわれサミット参加国の安全は不可分であり、グローバルな観点から取り組まなければならない」という文言が含まれることになった。
その後、西側同盟はその結束を維持しながら、ソ連に対する圧力をかけることで、冷戦終結とソ連の解体に帰結する。日本がG7の枠組みの中で、経済問題だけではなく、安全保障問題でも重要な主導的な役割を担えることを、中曽根は証明した。このウィリアムズバーグ・サミット以降、G7で安全保障問題も議題に含められるようになっていく。
このような中曽根外交の軌跡は、現在の岸田文雄政権の外交を考えるうえで示唆的である。現在においても、1980年代の新冷戦の時代と同様に、G7はロシアの軍事的脅威に向き合いながら、その結束が試されている。
だが、現在G7が直面する課題は、よりいっそう深刻だ。というのも、ソ連の脅威に中国と提携して立ち向かっていた1980年代とは異なり、現在は中国とロシアが提携し、さらには「グローバル・サウス」の諸国の多くも、その両国との関係を強化しているからだ。
さらに、G7諸国はウクライナにおける現在進行しつつあるロシアの侵略と、台湾をめぐる中国の将来の武力統一の可能性と、その2つの危機に直面している。そのような複合的な危機に、米仏両国は異なる対応を示した。
対中接近を示唆するマクロン大統領
今年の4月5日から7日まで訪中したフランスのエマニュエル・マクロン大統領は、仏レゼコー紙とのインタビューの中で、「最悪なのは、欧州がこの問題でアメリカのペースや中国の過剰反応に追随しなければならないと考えることだ」と述べて、「私たちの優先事項は他国の予定に合わせることではない」と答えた。
さらには、ヨーロッパがアメリカに「追随」するべきではないと論じて、対中接近を示唆するフランスの自主外交の姿勢を示した。加えて、台湾危機は「われわれの危機ではない」と答えて、「われわれのものではない危機にとらわれれば、ワナに陥る」と、台湾問題からヨーロッパが距離をとる必要を説いた。
フランスはこれまで、対ロシア政策をめぐっても、しばしばアメリカとは異なる独自の姿勢を示してきた。また、マクロン大統領はこれまで、停戦のためにはウクライナがロシアに対して一定の譲歩をする必要性があることを示唆し、ロシアをヨーロッパの大国として尊重する必要性を示唆してきた。
このようなフランスの独自のアプローチが、G7の結束を乱すようなことがあってはならない。
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