日本は「G7の結束」を強化することができるのか 40年前の中曽根外交というモデルに学ぶこと

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このときに、NATOの軍事機構に参加していなかったフランスは、経済問題を扱うG7の枠組みの中で、軍事問題を議題に含めることには否定的であった。フランスは自律的な外交を展開することで、ソ連に対してもアメリカとは異なる姿勢を示していた。

さらには、多くの軍事基地をアジアに擁するアメリカがヨーロッパとアジアの安全保障を一体として捉えていたのに対して、フランスはそうではなかった。ヨーロッパで緊張が緩和される一方で、ソ連のSS20のミサイルの一部がアジアに配備される懸念に対して、米仏両国が歩調を揃えることが重要だった。

中曽根首相は、国際舞台で日本が積極的な役割を担うべきだという信念を有していた。中曽根は、フランス語を用いてミッテラン大統領を説得して、アメリカに歩み寄って西側諸国の結束を強化するべきだと説いた。

中曽根首相は米欧間の亀裂回避に貢献

このサミットで、次のように中曽根はミッテラン大統領へ向けて語った。「今は西側の結束をソ連に示す時である。日本はアジアの一国であっていわゆる『西側』の一員ではないが、自分は世界の安全保障はグローバルに考えるべきであると思う」。

そのような中曽根の熱意を受けて、ミッテラン大統領は譲歩をして、サミットの政治声明のなかで「西側同盟の一体性」についての言及がなされた。

このように中曽根首相は、ウィリアムズバーグ・サミットにおいて米欧間の亀裂を回避することに貢献し、またヨーロッパの安全保障問題とアジアの安全保障問題が不可分であることを強調した。米欧間と、ヨーロッパとアジアの間と、2つの亀裂を回避して、G7としての結束を深めることに貢献した。

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