日本は「経営者天国」安すぎる給料の元凶はこれだ 「給料交渉」「転職」でもっと経営者を追い込もう

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ここで1つ、大切なことがあります。

ここまで説明してきた「給料交渉」「転職」という2つの武器は、あなただけが抜け駆けをして給料を上げる方法では断じてありません

あなたが「給料交渉」をし、「転職」を視野に動き始めることは、あなたの会社の経営者にプレッシャーを与えることになります。

そういう人が増えれば増えるほど、多くの経営者がプレッシャーを感じます。優秀な人に辞めてほしくない経営者は、給料アップを検討し始めるかもしれません。逆に、優秀な人を採用したい経営者は、自社の給料を引き上げることで転職者から選んでもらおうとするでしょう。

これが、海外で実際に起きていることです。経営者たちを「賃上げ競争」に駆り立てるのです。これはあなただけでなく、日本で働くすべての労働者の利益になります。

もちろん、経営者たちはただ単に給料を上げることはできません。ない袖は振れないからです。

従業員の給料を上げるためには、会社の生産性を高めざるを得ません。これまで「現状維持」をして逃げ切ることだけを考えていた経営者も、新たな需要を発掘し、イノベーションを起こそうと努力せざるを得なくなるでしょう。

その結果、日本全体の生産性が上がり、日本人みんなの給料が上がるのです。

つまりあなたが、あなた自身の給料を上げるために動き出すことが、結果的に日本人みんなを豊かにするのです。

いま動き出さないと、生活は苦しくなる一方だ

私が日本人のみなさんに勇気をもって立ち上がることをすすめるのには、確固たる理由があります。

それは、2060年まで高齢者がほとんど減らない一方で、働き手が大きく減ってしまうからです。

あなたの給料がこれまでのように横ばいのまま推移すると、税金と社会保障費の負担が増えて、手取り収入が減ってしまい、確実にいま以上に貧しくなってしまいます。これは人口減少と高齢化が同時に進む日本の、避けることのできない厳しい現実です。

長年給料が上がらなかったので、すでに生活が大変だと思っている人も少なくないでしょう。将来への不安を払拭できない人もたくさんいると思います。

しかし、いまこのタイミングで立ち上がらなければ、事態が悪化の一途をたどることは避けられないのです。

もちろん、お金があれば何でもできるわけではなく、それだけで幸せになれるわけでもないのは承知しています。

しかし、お金がなければ物質的にも精神的にも余裕がなくなり、充実した人生を送るのが難しくなってしまうのも事実です。あなたがより多くの報酬をもらいたいと考えるのは当然です。それは、なんら非難されることではないのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

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David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

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