セブン井阪社長は退任!「ファンド株主」独占激白 株主提案の「バリューアクト」直撃インタビュー

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──今回の株主提案は取締役の選任議案ですが、セブン&アイには以前からコンビニ事業のスピンオフ(分離・独立)を求めてきました。

これまでに行った何百もの企業への投資経験から、「Sentaku-Syutyu(選択と集中)」は企業の長期的な目標達成に貢献すると考えている。セブン&アイにとっても、コンビニ事業のスピンオフは企業として大きく成長する有力な手段の一つとなる。

われわれの試算では、セブン-イレブンをスピンオフさせ、同業他社並みに成長したとすれば、株価は今後6年間で3倍程度上昇するだろう。それにもかかわらず井阪社長は、コンビニとスーパーという異なる事業間に「定量化できないシナジーがある」と繰り返すばかりだ。

──井阪社長は、コンビニの成長に不可欠な「食」への集中にあたってイトーヨーカ堂のノウハウが必要で、両社を切り離すことはできないと主張しています。

約18年前に持ち株会社体制にして以降、セブン&アイは中期経営計画を出すたびにヨーカ堂の構造改革を進めると言い続けてきた。つまり国内に約100店舗展開するヨーカ堂の建て直しに力を注ぐがあまり、世界に8万店以上あり成長の原動力でもあるセブンーイレブンに注力しきれていないのだ。

またセブン&アイは、セブンーイレブンで取り扱う食品をヨーカ堂の社員が開発しているからヨーカ堂が必要だと主張する。確かに開発メンバー130人のうち約80人は、ヨーカ堂やほかのセブン&アイ傘下のスーパーストアの従業員であるということも理解している。

セブン&アイの井阪社長とロゴ
バリューアクトの主張に対し、スーパー事業の切り離しはコンビニの競争力を落とすことになると井阪社長は反論している(撮影:梅谷秀司)

しかしその人数は、全グループ従業員の0.2%に過ぎない。さらに言えば、セブン‐イレブンとヨーカ堂の資本関係が切れたとしても、この130人が一緒に仕事ができないということにはならない。

世界を見ると、ジョイントベンチャー(JV)を作り企業の枠を超えて協力するという例は多い。私が社外取締役を務めるオリンパスも、ソニーとJVを作っている。

そのJVのソニー・オリンパスメディカルソリューションズでは、共同で手術用内視鏡技術の開発を行っている。そうすることで2社の経営陣は、それぞれの人材の強みを特定の分野で融合させつつも、注力すべき事業に専念することができている。

オリンパスとソニーが協力して産み出したイノベーションは本当にすばらしいものだ。セブンーイレブンがスピンオフして独立したとしても、コラボレーションは実現できる。セブンーイレブンと建て直しが困難なヨーカ堂を同じホールディングカンパニー傘下に置く理由はないと考えている。

勝てると信じている

──今回のプロキシーファイト(委任状争奪戦)に勝算はありますか。

われわれは説得力のある判断材料を提供しており、プロキシーファイトに勝てると信じている。今後さらに詳しいプレゼンテーション資料を公表し、新しい候補者と株主がミーティングできる機会を提供する予定だ。

優れた企業は、優れたリーダーシップによって生まれるのが世界的な傾向だ。セブン&アイがよりすばらしい企業になるためには、今、変化しなければならない。そのために事実を基に、引き続きセブン&アイや株主に呼びかけていく。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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冨永 望 東洋経済 記者

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とみなが のぞむ / Nozomu Tominaga

小売業界を担当。大学時代はゼミに入らず、地元密着型の居酒屋と食堂のアルバイトに精を出す。好きな物はパクチーと芋焼酎。

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