半年後に「リーマンショック級の金融危機」あるか 過去の金融危機からアメリカが学んでいること

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この間、ついにゴールドマンとモルガン両行は、「投資銀行」つまり証券会社のままでは得られない、FRBからの融資への恒久的なアクセスを得るため、「銀行持ち株会社」への転身を決定したのだった。

このような投資銀行の崩壊がどうして起きたのか?拙著でも詳述しているが、それは、投資銀行を中心とする「シャドウ・バンキング・システム 」が機能不全を起こし、個別行の事情を超えて連動的にビジネスモデルに支障を来したからである。

沈んだままの日本、立ち直ったアメリカの差

では今回はどうか。

読者は鋭く気にされたかもしれないが、あえてベアー・スターンズ買収の「半年」後にリーマン・ブラザーズ破綻があったと強調してきたけれども、今回のクレディ・スイス買収の後、同じような巨大破綻が半年後に来る、とは筆者は現時点で考えていない。

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クレディ・スイスの経営不安の原因は、投資銀行部門を中心とする不振と筆頭株主サウジ・ナショナル・バンクの追加出資否定報道であり、未だ個別行の問題と見受けられるからである。(なお、クレディ・スイスは、預金も有しており、商業銀行部門も投資銀行部門も共に備える、ヨーロッパで一般的な「ユニバーサル・バンク」の1つである。)

一方で、そのベアー・スターンズ買収後の経緯のように、また、「アメリカ史上最大」の破綻であったワシントン・ミューチュアルが、現在の米国健全性規制ではカテゴリーIIIに当たるものの、リーマンショック時の危機を深めアメリカ政府による「資本注入」の対応を余儀なくしたように、つねに警戒は決して怠ってはいけないであろう。

とりわけ、アメリカ”3S+F”地銀の崩壊が示した「デジタル・バンク・ラン」(スマホ取引やSNS情報拡散等で格段に加速されたデジタル環境下の銀行取り付け)については、たんに取引などのスピードの問題と軽視せずに、実態を超えた不安の拡大への一定の歯止めを含め、政策的備えが必要と考えられる。

そして、今のところ、UBSのクレディ・スイス買収、JPモルガンのファーストリパブリック買収と、「民間共助」が生きているが、利上げ基調の下、金融機関の株価が引き続き不安定の中、金融システム維持上、いざとなれば資本注入など国の直接的な公的資金投入をためらってはならないのではないか。

いずれにせよ、先例のないまま対応に苦しみ脱却まで長く時間がかかった日本の「平成金融危機」から、(反面教師的に)「学んだ」アメリカが、いかにして、とりわけ不人気政策ではあるが「正解」たる「資本注入」を迅速に実施し、リーマンショックからV字回復したのか。そして、この日米両危機を比較検討した結果、以降の金融危機への教訓とは何なのか。

ここで拙著を踏まえ一言だけ申し上げると、その後の日米の経済状況の格差を見るにつけても、「『正解』たる政策は、必ずしも人気政策ではない」ということである。

*Takeo Hoshi and Anil Kashyap ”Will the U.S. bank recapitalization succeed? Eight lessons from Japan“(Journal of Financial Economics 2010,vol.97 issue 3, 398-417)

滝波 宏文 参議院議員、元経済産業大臣政務官

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たきなみひろふみ

元経済産業大臣政務官、財務省広報室長、スタンフォード大学客員研究員、財務総合政策研究所客員研究員。米国公認会計士(US CPA)。東京大学法学部卒。シカゴ大学大学院公共政策学科修了、修士(MPP)。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了、博士(PhD)。 1994年大蔵省入省後、内閣参事官補佐、財務省の主計局主査、人事企画室長、首席監察官等を歴任。2013年参院初当選。2019年再選。参議院にて経済産業委員会/資源エネルギー調査会筆頭理事など、自民党にて「企業等への資本性資金の供給PT」事務局次長、金融調査会事務総長代行、原子力規制特別委員会幹事長など、参院自民党の青年局代表、政策審議副会長等を歴任。

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