半年後に「リーマンショック級の金融危機」あるか 過去の金融危機からアメリカが学んでいること

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ファースト・リパブリック銀行
シリコンバレー銀行に続いて、5月にはファースト・リパブリック銀行も破綻した(写真:Jason Henry/Bloomberg)
今年3月、世界は「金融危機」の戦慄を思い出した。時は、コロナ禍の発生から約3年が経過し、ロシアのウクライナ侵略からは約1年。突如として沸き起こったシリコンバレー銀行の経営破綻は、「リーマンショック以降で最大」「アメリカ史上2番目の規模」といった表現と共に世界的に報じられ、10年以上前のグローバル金融危機――いわゆるリーマンショック――の悪夢を彷彿とさせた。
今回の金融危機はどれほど深刻なものなのか。『日米金融危機の政治経済学: 平成金融危機&リーマンショック 7つの教訓』著者である滝波宏文氏が過去の日米金融危機と比較し、今回の金融危機の先行きを占う。

金融危機は繰り返す

日本では1997年11月に、政府が世界にその存続を約束していたはずの大手銀行の一角(北海道拓殖銀行)や、証券業界4位の規模を誇った山一証券が破綻し、1998年秋には、日本長期信用銀行や日本債券信用銀行が国有化で消滅、2003年のりそな銀行への「資本注入」が収束するまで長く続く「平成金融危機」となった。

アメリカでは2008年9月に投資銀行大手リーマン・ブラザーズの破綻をピークとしていわゆる「リーマンショック」が発生した。

今回、2023年3月10日に破綻したシリコンバレー銀行は、直前のシルバーゲート銀行の清算/直後のシグネチャー銀行の破綻と、偶々であるがいずれも頭文字Sで始まる。加えて、5月に入り、ファースト・リパブリック銀行も破綻した。これら“問題化した金融機関“である4銀行は、規模としては、アメリカの健全性規制においてカテゴリーIV相当以下であり、地銀のレベルであった。

むしろ、飛び火したヨーロッパの巨大銀行クレディ・スイスのほうが、アメリカではカテゴリーIに位置づけられるG-SIB(Global Systemically Important Bank:グローバルなシステム上重要な銀行)であり、その行く末は日本を含め相当の影響があり得た。しかし、スイス当局にサポートされた、同じスイスのG-SIBであるUBSによるクレディ・スイス買収で、当座の収束を見ている。

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