半年後に「リーマンショック級の金融危機」あるか 過去の金融危機からアメリカが学んでいること
そしてこれは、先行研究(東大の星教授とシカゴ大のカシャップ教授による論文*)が示す「日本の経験からの8つの教訓」から、教訓の削除1つ・変更1つを行って提示したものであるが、この教訓自体の修正につながった同書の「中心的結論」は、次の2点である。
1. 日米金融危機のような著しく深刻な金融危機において、問題は「資産」サイドではなく、「資本」サイドである。すなわち、「不良資産買い取り」ではなく、「資本注入」がカギである。
2.(国による強制的倒産である)「国有化」は、著しく深刻な金融危機への対応としては経済回復を遅らせかねず、むしろ“問題化した金融機関”の債務超過が確定する前に、できる限りスピーディーに十分な「資本注入」を行うべきである。
「国の迅速な対応」の必要性と、「資本」の重要性
平成金融危機とリーマンショックの経緯を追いながら整理をした、以上の教訓等の詳細については拙著をご覧いただきたいが、これらに大きく共通するのは、「国の迅速な対応」の必要性と、「資本」の重要性である。
今般は、クレディ・スイスをUBSが買収したため、国による直接的な「資本注入」(資本サイドからの救済的な公的資金投入)などには至らなかったが、スイスの中央銀行であるスイス国立銀行より1000億スイスフラン(約14兆円)を上限とする政府保証付き貸し付けが用意され、また、スイス政府が90億スイスフラン(約1.3兆円)を上限としてUBSが取得するクレディ・スイスの一定資産に対する損失補償を提供している。
ちょうどリーマン・ブラザーズ破綻の「半年」前に(アメリカの中央銀行であるFRB下の)ニューヨーク連邦準備銀行からの290億ドル(約2.9兆円)拠出を前提になされた、JPモルガンによるベアー・スターンズ買収のように、これらスイス当局からのサポートに基づき、UBSはクレディ・スイス買収を決定しており、金融危機の深刻化を止めるための迅速な(中央銀行を含む)国の対応は、やはり重要であることが示された。
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