ジャニーズタレントに「CM降板」の可能性はあるか 社会的な正しさとのジレンマの中で企業はどう動く
テレビCMへの出演を例に取ると、一般に、撮影は短期間で終わる割に、収入は数百万円から数千万円と高額のため、費用対効果はよい仕事と言える。加えて、テレビCMは不特定多数の視聴者の目に触れる可能性が高いため、芸能活動のプロモーションとしても有効である。
ジャニーズ事務所が、スポンサー企業に文書を送付したことは、それらへの配慮があったといっていい。
また、文藝春秋社が企業へのアンケート調査を行ったのも、そこからジャニーズ事務所の行動をただそうという意図があったからとも考えられる。
撤退しても、継続してもリスクになるというジレンマ
CM契約をはじめとして、企業がタレントとのスポンサーシップを継続するか否かについて、明確な基準があるわけではない。また、それは業界や企業、タレントのイメージや起用範囲によっても大いに左右される。ケースバイケースで判断するのが一般的だ。
タレントが刑法に抵触するような不祥事を起こした場合は、当然のことながらほとんどの場合は降板となる。不倫や不適切発言などに関しては、ケースによって判断される。
今回の場合、難しいのは、ジャニーズ事務所に所属するタレント個人が起こした事案ではなく、また加害した側にあたるジャニー喜多川氏がすでに死去してしまっているという点である。
ジャニーズ事務所所属のタレントをCM等から降板させた場合、ファンを中心に「(タレント)本人は悪くないのに」「もしかすると彼も被害者かもしれないのに、仕事を奪ってしまうのは本末転倒ではないか」といった声が出てくる可能性は、十分想定される。
CMを継続したらしたで、「性加害を放置している企業を儲けさせるのか」という批判を浴びることになるだろう。
どちらの選択をしても、批判は免れないというジレンマに、否応なく陥ってしまっているのだ。
問われるスポンサー企業の社会性
スポンサー企業や団体は一枚岩ではない。官公庁や自治体、およびその外郭団体、教育やインフラ系などの公益性の高い企業、あるいはグローバル大手企業は、一般に不祥事に対して厳しく、タレント起用についても厳しい判断をしがちである。
かつて香川照之氏の性加害報道の際には、トヨタ自動車が他社に先んじて降板を決めた。
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