オムロン、「消費電力の見える化」で狙う工場改革 生産性が向上し温室効果ガスの排出量も削減

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「エネルギー生産性を向上させるために必要な4大要素は、時間、空間、距離、在庫」。オムロンヘルスケアの曽根直樹・松阪工場長はそう話す。
松阪事業所では、曽根氏のいう4つすべてを半分にする「オールインハーフ」を掲げる。

消費電力量を可視化したうえで、「オールインハーフ」を目指して進められているのが、「自動機の稼働率改善」「生産ラインの改善」「需要連動型生産」の3つだ。

機器の稼働率が改善し在庫は削減

まず、自動機の稼働率改善。基板のはんだ付けをする実装機では、製造品目の切り替えや従業員の休憩などにより、稼働していない時間が生じる。そこで、生産ラインに基板が流れているか検知するセンサーなどを利用して、稼働していない時間を把握し、空き時間に行える生産を割り当てた。

オムロンヘルスケアに置かれているモニター
従業員が通る廊下に置かれているのは大きなモニター。日々の「エネルギー生産性」が大きく映し出されている(写真:記者撮影)

生産ラインの改善では無駄なスペースの削減を行った。血圧計の生産ラインの1つは、14メートルあった1ラインの長さを10メートルに短縮できた。

省スペース化によって空調に使われる電力量が減るだけでなく、従業員の無駄な動きも削減される。

需要連動型生産は、文字どおり需要に合わせて製造する仕組みだ。以前は同じ製品を予備の在庫も含め、まとめて生産していた。だがオムロンでは、販売代理店や家電量販店といった市場で、どれくらいの製品が売れたかというデータが工場とつながっている。そこでこのデータに基づいて、余分な在庫を作らないようにする。

生産ラインの短縮や在庫削減で、工場内には空きスペースが生まれる。松阪工場の生産ラインは生産棟3棟に分散しているが、2030年度までに生産棟を1棟に集約する計画だ。生産集約で生まれたスペースは、外部に倉庫を借りている部品在庫の保管場所や試作用のラインに変える。

エネルギー生産性の向上は、温室効果ガスの排出量削減につながる。血圧計のライン短縮では、1台当たり排出量の46%削減が見込まれる。これらの効果で松阪事業所は、オフィスや工場からの排出量を2030年度までに2016年度比で65%削減する。2050年度には排出量ゼロを目指す。

「とくにヨーロッパでは環境対応活動を顧客に聞かれる。脱炭素社会に向けた対応をしていない企業の製品は買わない、という顧客が数年経てば出てくるだろう。その流れに先駆けて、ちゃんと対応する企業であり続けたい」。オムロンヘルスケアの鈴木統轄部長はそう語る。

松阪事業所での試みは、世界的に向けられる視線が厳しくなっている企業の環境対策をも先取りしているというわけだ。このように先進的な動きをとれているのは、オムロンで続けてきた取り組みがあったからだ。

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