5月の広島サミットは「G7」の斜陽化を決定づける 世界の多極化はもはや止められない

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グローバルサウスには、世界人口の半数を上回る40億人が住み100を超える国家が属する。一方、G7は発足時の1970年代初頭の成員のGDPで世界の6割強を占めていたが、今や4割台に低下。人口比では世界の10%にすぎない少数派だ。

グローバルサウスは、まとまりのある集団ではない。ただ共通点も少なくない。第1に、バイデン政権が米中対立で強調する「民主か専制か」「アメリカか中国か」という二元論に基づく「新冷戦論」には与しない。

第2に、「普遍的価値観」としての民主、自由、法の支配など、理念先行の外交ではなく、国益に基づく実利外交でも共通する。むしろ米中対立を利用してエネルギー、食糧・気候変動問題などで、米中双方から経済的支援を引き出すことを国益とみなす傾向が強い。「民主主義陣営に引き込む」という狙いとは逆ベクトルが働いている。

日本は名誉白人がアイデンティティーか

岸田首相はことあるごとに、日本を「アジア唯一のG7メンバー」と誇らしげに口にする。中国の人民日報系「環球時報」は、G7外相会議閉幕の際の社説で、その「口癖」を次のように突いた。

「(日本は)アジアでG7唯一のメンバーと主張し、アジアで自分の『西側の身分』を突出させることにアイデンティティーを見いだしてきた」。G7メンバーであることが、あたかも「名誉白人」であるかのような幻想を突いたのである。

日本の1人当たりGDPは、ドル換算で韓国、台湾、香港、シンガポールを下回り、世界30位にまで下落した。インドのGDPはまもなく日本のGDPを抜き去る。アメリカ、日本などG7成員国の政治・経済力が減衰しG7は「斜陽クラブ」になった。

世界秩序は、アメリカ一極支配には戻らない。代わって中国、インド、ロシア、ブラジル、南アフリカの「BRICS」に代表される多極化秩序にとって代わりつつある。広島サミットはその転換点が際立つ会議になるかもしれない。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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